第二十二話 王子は負けない
「じゃ、じゃあ!ケインとグラン様が友達じゃないなら何なんだ?」
絞り出すようにガイは声を出す。
「なんでしょうね?ですが、私は彼らを友達とは認めません。」
「たしか、友達と紹介されたと思うが・・。」
「彼らが何を言っても聞かないんです。ですが、私は認めていません。」
「俺とも友達にはなってくれないのか?」
潤んだ瞳に息を呑むが、アリミナールは決めていた。
「絶対になりません。」せめてもと、笑顔で答える。
「う、そうか、いや、わかった。友達にはなれないんだな。でも、これからもアリミナールは、俺の話を聞いてくれるか?」
「はい。」
「そうか。」この一言に心がこもっていた気がする。
「今はなれなくても、今後友達になる可能性はあるよな。」
「はい!?」
「せっかくできた友達だから、俺は大切にしようと思う!」
この王子様はいったい何を言っているんだ。拒絶したんだからあきらめてよ。
それからというもの、ガイの無口が嘘のようにアリミナールについて質問攻めにあう。好きな物や嫌いなもの、趣味やグランとケインについても。
「なるほど、意外とアリミナールはよく話すな!」
「ガイ様が質問攻めにするからです。ガイ様だってこんなにお話される方だなんて驚きました。次はもっとお話しになってくださいね。」
「わかった。次があるんだな。」
言葉の選択を誤ったみたいだ。
「いえ、間違えました。」
ちょっとふくれっ面みたくなってしまった。その表情をみてガイが笑っている。
アリミナールよ、っていうか私、流されるんじゃない。いくらガイ様ルートが、唯一のバッドエンドなしとはいえ、油断していい相手ではないはずだ。
「ケインは誰がみても兄のことが一番だと思っていたが、アリミナールのことも心配しているように感じた。あいつは俺と違って甘えるのがうまいのに、それでもアリミナールは友達だと認めていないということだよな?」
「そうですね。」
「これからすごく楽しくなるな!」
「え?どういう意味ですか!?」
ガイ様は脈絡のない会話の説明をしてはくれなかった。
帰りの馬車の中、窓を見つめる元気な少女はいない。少し落ち込んでいるようだ。強面な男は、女性に優しくすることに気が利かない。しかし、ガイ様としばらく会話がないことには不安になったが、どうやら仲良くなったみたいだ。しかし、なぜ少女は元気がないのか、理由はわからなかった。