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第二百十二話 設定よりも

推し相手だと、口が軽くなってしまう。これもすべて可愛いのがいけない!どうしてこんなに可愛いのだろうか。現実に存在する人物でも、やはり推しは可愛いものなんだな。


「本当に、アリーがこんなに話すなんて珍しい。」

空気と化していたケインが消え入るような声で話しだした。


「どこかの誰かが言っていました。口は災いの元、やっぱり私は黙っていたほうがいいですよね。」

ゲームの設定って大事だよね。もしや、自分の発言がいけないのだろうか?アリミナールだと言わない言葉を言っている?・・・言っているな。アリミナールは攻略対象者に可愛いって言わない!でも、行動がおかしいのは私だけじゃないよ?リリーダだって変だし、攻略対象者のみんなも設定守ってないし。みんな転生者ってわけはないし。私が言うことではないけど、もうゲームのシナリオは諦めたほうがいいのでは?ここは、何が何でもリリーダに頑張ってもらうしかないと思うのよね。

いや、待てよ。というか、そもそも女の子から攻めるなんておかしくない?みんなそんなにヘタレなの!?いやいや、これ乙女ゲームだから!攻略対象者にそんな失礼なこと言ってはいけないよね。うんうん。・・・・やっぱり私が口出すとロクなことがない!黙ってよう。


「アリーと話すのは楽しいから、もっと話したいって思うよ?災いになんてならないよ。」

「え・・!?」


なっなっ、うわぁ~!いきなりそういうこと言うの、やめてほしい!ケインって子供のまま大人になったみたいに、普通に恥ずかしいこと言うよね。これがアリミナールちゃん(ゲームの)なら惚れているよ?もしや、私の見た目があれだから妹のように感じて接してくるのだろうか?そうなると今までの行動が少し理解できるかもしれない。


「お前らは、知り合いなのか?チーム協力型、体力測定でも一緒にいたよな?」

ナリクがアリミナールとケインに対して質問してきた。

「そうだよ。」

「違います。」

二人の意見は合わなかった。


「・・・?友達なのか?」

「まぁ。」

「違います。」

それでも二人の意見は合わなかった。


「・・・兄妹ではないよな?」

「僕には兄さんしかいません。この学園には、ね。」


アリミナールは、両手を出して指で写真型を作って、レンズ越しに二人を見るように眺めてみた。そして、今更なことに気づく。


すごい。ブラコンとツンデレが話している。


「なにしているんだ?」

「眩しいの?」


ナリクとケインがそれぞれ不審そうに見てくる。


設定を守っていたらこんな光景、拝めなかったかも。



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