第二十一話 静かな時間
「・・・。」
「・・・。」
紅茶を一口頂く。アリミナール・ブラックレスはジェット国の城を案内され、そののちにガイ・ブルスタール様とお会いすることができた。彼は基本口数が少ない、それを知っているアリミナールからすれば普段通りだと思っている。無理に話しかけたりすることはしない。しかし、後ろに控えている警護人はなぜか心配そうに狼狽えていることがわかる。私は自分から話しかけたりは絶対にしないのだ!と心に誓っている。グランやケインの初コンタクトに失敗した、私だから言えることである。しかし一向に話しかけてこないガイ様。10分はたったな。ふはははは!私はこの空気に耐えられるが、他のものは苦しかろう。などと一人で心の中ではしゃいでいた。
「あ、あの、アリミナールと呼んでよいか?」
アリミナールは驚いた。喋った、ガイ様が喋ったよ。『クラ〇が立った!』ぐらいの衝撃だよ。まさか名前呼びに時間かかったとか、かわいすぎかよ。頭くしゃくしゃ撫でてやりたいよ。
「はい。」
アリミナールは必要最低限しか喋らなかった。心のなかでは悶絶しているが。
それを皮切りにガイ様は少しずつ話はじめた。
「ケインは、一番仲の良い友達なんだ。いつも兄であるグラン様のことは聞いていたんだが、あ、アリミナールのことは聞いていなかった。」
「そうでしたか。私も、ガイ様については何も聞いていませんの。ケイン様はグラン様のことが大好きだから他のことはあまりお話にならないんですね。」
「ああ、この前もケインは兄のことばかり話していたな。俺といる時はいつも兄の話をするのかと思っていたが、誰に対してもなんだな。」
「ふふふ。」
「あ、アリミナールはグラン様とも友達なんだよな。この前会ったときになんだか機嫌が悪そうに睨まれた気がするんだが、俺が何かしただろうか?」
「グラン様とは友達ではありませんよ?睨まれた・・ケイン様と仲良くしていることに嫉妬していたのでしょうか?」
「嫉妬なんだろうか?あ、いや、グラン様とは友達ではないのか?それとも婚約者とかか?」
「いいえ。」ニコリ。
「あ、そうか。ケインと友達ってことか。」
「ケイン様とも友達ではありません。」
「え?」
「私には友達がいないんです。」
「なら、俺と友達になってくれるか?」
「・・嫌です。」
ニコリ。
暖かな風が周りに広がり、また静かな時間が来る。




