第二百五話 ツンデレ君はチャンスを呼び込む
言いそびれた・・・。魔法で服乾かせるから大丈夫だよって。
きっと人を呼びに行ってくれているのだろうと思い、動かず待っていることにした。さきほどの言動を思い出し、ここに戻ってくるようなので面倒を起こさないように座って待つことにする。後は、魔法で服を乾かすのも驚かせてしまうため戻ってから説明しようと決めた。
全身濡れてしまったアリミナールは、ピッタリと制服が体にくっついており肌から引きはがしても無駄だった。スカートも例外なく、くっつくので結び目を外そうとは思わなかった。そのため太股まで見える。うっすらと制服の肩が透けていることには気づいていなかった。
ぶらぶらと足を揺れ動かしていると、ナリクが使用人らしき人物を連れ戻ってきた。
身長があり、この暑い中黒いメイド服を纏っている。襟や袖は白く、長いスカートが特徴的だ。長い髪を緩く一つにまとめており、前髪は瞼の上まで長く整えられている。
近くで見てアリミナールは気づいた。なぜこの使用人が選ばれたのかは疑問ではあるが、さきほど考えていた魔法を使用して乾かすという案は、一瞬にして消去することにした。
連れてこられたメイドさんは、アリミナールの惨状を見て驚きのためか視線が泳いでいる。
「こいつのことお願いします。」
メイドを連れてきたナリクは、すぐにメイドのほうに視線を合わせて引き渡してきた。
自分が濡れていることをいいことに、ナリクの力を借りてメイドと話せる状況にアリミナールは一人嗤っていた。二人はそのことに気づいていないようだ。
ぐいっ。
メイドが逃げられないように、スカートの裾を引っ張る。濡れている状況のため、考える隙を与えないようにする。
「あ、ではこちらに。」
予想通り、メイドはアリミナールを移動させようとしているようだ。
思いがけずにメイドとの時間を作ることが出来たため、ニコニコ笑顔のアリミナールだが、二人は顔を見ることが出来ない状況のため気づいていなかった。
移動する際にナリクを見たが、すぐに目を逸らされ、だいぶお怒りのようだ。そんなことも気にせずにメイドに付いていくことにする。
移動する間、メイドは一言も話してこない。使用人ということもあり、誰の目にも留まることがないよう人のいない道を選び、保健室の方向に向かっているようだ。




