第二百話 喧嘩するほど仲が良いのか、悪いのか?
「アリミナール!」
グランが引き留める行為を止めることはない。
アリミナールが口を開く前に、レイのほうがグランに反応してすぐに対応してくれる。
「グラン様、この方は私に御用があってまいりましたのよ。いくらグラン様でも、邪魔をするなら見過ごせませんわ。」
「何を言っている?アリミナールが気にしているのはその使用人だ。」
「だから何だと言うのですか。グラン様がお止めになる理由にはならないかと。」
「君に話しているんじゃない。俺はアリミナールに言っているだ。」
「まぁ、先ほどからお名前を呼び過ぎではなくて?この子とはそんなに仲がよろしいのかしら?」
「君には関係ない。」
「またそう言われるのですね!グラン様はいつもそうですわ!」
「はぁ!?」
「・・・。」
おやおや、仲がよろしいことで。これは痴話喧嘩というやつかな?リリーダのことを考えると、仲良しだと困るけど伏線だと思うことにしよう。どちらにしても、メイドさんに用があるのに、これじゃ目立つだけだな。
アリミナールは、キョロキョロとレイとグランの両方を比べて見やる。
「この子がどなたと話そうとグラン様には関係ありませんよね!何をムキになってらっしゃるのかしら?」
「ただのメイドなら止めたりしない。あなたも十分理解しているだろう。」
「どういうことでしょうか?私の使用人は十分有能ですし、問題ありませんわ。」
「有能かどうかの問題ではない。」
混ぜるな危険ってこういうことを言うのかな。メイドさんも困っている様子だな。
レイのメイドは、二人を止めようと身振り手振りしているが、二人の言い争いは止まらない。
「使用人だからと言って、お話しするなと言うつもりですの?そこまでグラン様が心の狭いお方だとは思いませんでしたわ!」
「使用人だからではない!」
さすがのアリミナールも教室内でも諍いに、巻き込まれているかのような状況にいたたまれなくなる。周りを見れば、クラスの人たちが心配そうに二人の言い争いを見ている。高貴な二人の喧嘩に入ろうという勇者はいないようだ。
くいっ、くいっ。
アリミナールは行動に出た。
グランとレイの腕の裾を引っ張り、こちらに視線を落としてもらう。
「・・・喧嘩・・・ダメ。」
上目遣いで言葉を振り絞り、二人にお願いしてみた。
キュン。
隣のお姫様から変な音が聞こえた気がしたのは気のせいだろう。




