表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/246

第二十話 子供の時間

 その日は慌ただしかった。普段出かけないはずのアリミナールの身の回りを、使用人たちが右往左往していた。出発の際はお父さままでもがお見送りに来られた。


「アリー、お前のことは信用しているが、くれぐれもお行儀良くな?」

 お父様のその言葉に、コクリと頷きをみせ安心したようだ。アリミナールの胸中は、王子様に無礼があれば追放されることも、夢ではないかもしれないなどと考えていることは、この場の誰も考えない。また、屋敷の外を見たいとお父様に言おうと考えていたアリミナールが、ガイ様の招待を断るわけもない。 たとえお城でも外に出れるならと考えていた。

 ジェット国の馬のような紋章をつけた馬車に揺られどのくらいたっただろうか、普段見慣れない町まで通るため、アリミナールはわくわくしていた。警護のため馬車には一人強面な男性がいたが、馬車の中での落ち着きのなさぐらい許されるだろうと、窓の外をずっとみていた。強面の警護人と目があえば、お嬢様スマイルで誤魔化すことにした。


 アリミナールとともに馬車に乗車していた強面の男。普段はジェット国の王子たちの警護や城に招く客の警護に充てられることも珍しくない。最近ではガイ・ブルスタール王子の警護の一人である。普段、お城に向かう客たちのなんと浅はかなことか、城内について質問攻めにされるのであるが、目の前のお嬢様ときたら窓の外ばかりみている。ガイ様と同年代ということは6歳ほどであろうか、身長は年齢よりも小さくみえ小柄、大きな目を輝かせている。可愛らしい外見のため、屋敷からそう出ることがないのだろう。普段から顔が怖いと言われる自分にさえ、目が合うと笑顔を向けてくれる。ガイ・ブルスタール王子とはまだ半年ほどしか使えていないが、まだ子供であるはずの彼は言葉数が少ない。何を考えているかよくわからない方だが、目の前の少女のような友人が出来たのは喜ばしいことである。そんなことを考えていたためか、少女と目が合うと微笑みかけてしまった。


 アリミナール・ブラックレスは顔に出ない。しかし、強面の警護の人が微笑みかけてきたことに驚いている。そして笑顔を返す。


「外の世界は広いんですね。」

「はい、どうぞお気になさらず楽しんください。」


 やはり、アリミナール・ブラックレス嬢は箱入りお嬢様であったかと納得をした強面の警護人であった。少しばかりかわいそうな気もしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ