第百九十七話 あざとカワイイは最強説
「やはり、グラン様は可愛いですね。あ、怒りますか?」
「はぁ!?怒るに決まっている。成長してからそんなことを言われたことはない!」
「そうですか。」
まぁ、そうだろうな。きっとカッコいいに変換されているのだろう。でも美少年なのは変わらないので、可愛いとは思う。子供の頃の笑顔は特に反則級だったけど。特に、自分が可愛いと理解しているグランのあざとカワイイ笑顔は最強だったと思う。うん、あざとカワイイは最強説だね!
子供の頃のグランの姿を思い出し、口が緩む。
「次は俺が自己紹介をするべきか?」
「いえ、興味がないので大丈夫です。」
真顔で答えてしまった。
「俺には興味ないと言うが、メイドには興味があるのか?」
「まぁ、ありますね。」
「なぜだ?」
「名前も教えてくれないメイドさん・・・興味をそそられます。」
これは嘘ではない。
「正直に聞くが、女性に興味があるのか?」
「何言っているのですか?」
あまりの唐突な質問に、ずさりとグランから一歩離れてしまった。
「あいつは!」
「綺麗なメイドさんですよね。でも、私さすがに女性に恋慕を抱くことはありませんよ?」
「え!?ああ、そうだよな。」
「グラン様は、女性に人気があると思いますが、男性には人気がないですよね。」
「え。」
ちょっと驚いている。え、知らなかったの?さて、ちょっと違う話題にさせてもらうよ。
「ちなみに私は、年の離れたお姉さまたちからの人気は特に高いです!そして、異性からは、特に年齢の離れた方からの人気は絶大です!」
自信満々に言った。
「はぁ。」
「とまぁ、どうでもいいことはさておいて・・・。私が口を開けば、このようなどうでもいいことしか話しません。それでもお続けになりますか?」
「どうでもいいことではないが。アリミナールとこうして話せることが俺は楽しいよ?」
私に優しくしたって何もないのに、それに優しい言葉に心を動かされる訳にはいかないのに。攻略対象者たちが予想に反して優しいのが、嬉しくもあり、悲しくもあり、怖くも感じる。
「そう言って頂けて・・嬉しいです・・。くっ。」
悔しそうに言葉をひねり出した。
「それは嬉しい表情なのか?」
時に優しさは凶器だと思う。
「はぁ~。どうしたら諦めてくれるかな。」
「それは、出来ないな。」
困りながらも、最後は笑顔を向けてしまった。




