第百九十六話 美少年の笑顔は有料ですか?
「危険だから近づくな」とぼそぼそ言ったグランの言葉が止まると、ふとアリミナールは違うことに思考を巡らせていた。
なぜグランはここにいるのだろうか?主人公のリリーダが、今一人でお昼を食べているということを考えるとグランのターンだと思うんだよね。ある意味攻略対象者の仕事を放棄しているって、さっきの言葉をそのままお返ししたいわ。あれ、これ誰かにも言ったことあるな。
「はぁ~。」
ふいにため息が出てしまった。
「俺と話す時間はくれないのに、あの使用人には自分から会いにいくのか?」
眉を下げ、悲しい表情をしてグランが聞いてきた。
「・・・。」
こてん。と首をかしげてみる。
「俺も、ケインもガイも、アリミナールのことを待っていた。6年近く、会えると言ったお前の言葉を信じて!」
グランは、アリミナールの両肩を掴み、力を入れる。
「もっと一緒にいる時間があると思っていたが、学園生活などほんの少しの時間しかない。俺の知るお前は、子供の頃しか記憶がない。今、目の前にアリミナールがいても遠い存在のように感じる。」
「・・・何を言いたいのですか?」
「もっと、アリミナールのことが知りたいんだ。」
「十分知っているではないですか。」
「ほとんど何も知らないだろう!俺のことだって、何も知らないだろう?」
私のことが知りたい?グランのことを何も知らない?攻略対象者たちは、何かおかしな言動ばかりだな。まぁ、私も人のこと言えないけど。なにを言えば満足して関わらないでいてくれるのだろうか・・・。
「わかりました!」
「え?」
大きく手を胸に当て、はっきりと答えた。
「私の名前は、アリミナール・ブラックレス!ライトストーリー学園の1年生です。好きな物は可愛いもの、嫌いな物は特になし。特技は魔法、好きな魔法は熱を持たない炎、苦手な魔法は極大魔法。本を読むことが好きで、旅をする話は特に好き。苦手なことは人と話すこと。好みの人は、いつもツンツン怒っているのに、時に優しくしてくれる人。嫌いな人は、幼い少女が好きな人。友達はリリーダ・キャラベルさん、子供の頃から一緒に育ってきました。私は、人を疑いやすいし、人と関わることも苦手だし、料理はよく爆発します。これくらいでしょうか!?」
少し間を感じた。
「くっ、あははっ!何それ!?」
「自己紹介です。」
突然に笑われたので、ぷくっと頬を膨らませて端的に答えた。
笑われたのには腹が立ちますが、なんですかこの美少年笑顔は!お金が必要なら払います!悔しいけど、可愛いので・・・。




