第百九十四話 メイドの秘密について
スカートの裾を引っ張って、そのまま走りはしないが、少し早歩きのように歩行していた。アリミナールは、レイのメイドを連れ出し人気のないところを探していた。周りに人はいるが、距離があるため声が聞こえないような庭園の方向で歩みを止めた。
歩みを止め、メイドに視線を合わせた。
「こんにちは。」
「えっ、はい。こんにちは。」
「メイド・・さん、なんですよね?」
「ええ。」
「そうですか。」
あまりに唐突の会話にメイドの目は泳いでいた。
「お名前・・聞いてもいいですか?」
「あ・・えっと。メイドで十分です。身分を踏まえ、あまり学園の方との交流は認められていませんので。」
「私、特異体質でこの学園に入学しているので、身分は低いです。」
「えっと、業務上のため申し訳ありませんが・・その・・。」
「わかりました。」
質問は終了するが、アリミナールの視線は依然メイドに向けられている。
じぃ~。
じぃ~。
メイドがアリミナールに視線を向けると、なぜか口角が上がり笑顔になっているように感じる。
『もしかして・・・バレてしまったのか?』
メイドの頭の中は、ばれてしまったのかの言葉が繰り返されている。
「あの!」
そのままアリミナールが次の言葉を出そうとした時、メイドのスカートを引っ張っていたほうとは反対の腕が大きな手に掴まれていた。
「そいつと何している?」
「グラン様・・?」
振り返るとグランが睨むようにこちらを見ていた。
「アリミナール、もうお昼は食べたのか?」
戸惑いつつも、グランの言葉に返事をする。
「はい。」
ちらちらとメイドのほうに気が向いてしまう。
「お前はもう下がっていいぞ。」
そう言ってメイドのほうにグランが指示を出していた。
「あ!待ってください、私・・この方とお話しがありますので!」
「話?」
そうですとも。気になるんだよね・・・。気になる、どうしても気になって仕方ないのだ。このメイドさんもしかしたら・・・。
「アリミナール、こいつにはこいつの仕事がある。そろそろ離してやれ。」
「え?」
「ずっと裾を引っ張っているぞ?」
「はっ!」
そう言われ、メイドさんの長いスカートを引っ張っていたことに気づく。しかし、その手を離しはしなかった。
「私は困らないです。」
「・・・?本人が困っているのだから、離してやれ。」
メイドさんは、不安そうに二人のやり取りを見ているだけだ。




