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第百九十三話 お姫様よりメイドさん

「私にお任せください!」

ガッと勢いよく手を握られてしまった。あまりに勢いよく身を乗り出すように掴まれたため、アリミナールはのけぞりそうになりレイの後ろに控えていたメイドが咄嗟に支えてくれた。

状況を飲み込めていないアリミナールは驚いたまま返事に困っている。


あれ?なんのことかな?私が聞き逃したのかな?お菓子の話をしていたと思ったんだけど、何か言ったかな。


混乱の中、ふと後ろで支えてくれたメイドを見上げていた。そして、目が合う。


「・・・え?」


支えてもらっていたメイドから態勢を整え、自分の力で姿勢を戻した。そして、しばらくメイドのほうに視線を向けていた。


「どうかなさいまして?」

「え!?いえ、何も。」


レイに声をかけられ悩むように視線が動く。


くいっ、くいっ。


メイドの長いスカートに、アリミナールが手を伸ばし呼びかけるように引っ張った。

突然の動作にレイのメイドも驚くが、大きく表情に出すことなくアリミナールに視線を合わせた。


「こんにちは。」


珍しくアリミナールから他人に声をかけていた。

メイドが答える間もなくレイのほうがアリミナールに声をかけていた。


「私のメイドがどうかなさいまして?」

「いえ・・・こちらの方は・・メイド・・さん?」

「ええ、私専属ですのよ。」

アリミナールの質問にレイは笑顔で答える。


じぃ~。


じぃ~。


視線を変えることなくアリミナールはメイドを見つめていた。そして突然に閃いたようにぱぁっと笑顔になる。


レイ専属のメイドは、レイよりも身長があり黒いメイド服を纏っている。襟や袖は白く、長いスカートが特徴的だ。長い髪を緩く一つにまとめており、前髪は瞼の上まで長く整えられている。


「あの・・よろしければ・・メイドさんを少しお借りしてもよろしいでしょうか?」

「え?ええ、いいわよ!好きにして。」

アリミナールのお願いを聞いて、なんでもどうぞといわんばかりにレイは答えた。


「では、ナリク君もすいませんが・・・失礼いたします!」

「え!?」

「えっ?」


レイとナリクは驚き、メイド自身も食事途中に連れ去られるとは思わず、声が漏れる。

それでもアリミナールはぐいっ、ぐいっとメイドのスカートの裾を引っ張って連れて行こうとしていた。


メイドは連れ去られる間、レイに向けてSOSのような信号を視線で送っていたが、レイは気にする様子もなく疑問には思いつつ、手を振って送り出していた。



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