第十九話 お嬢様は止まれない
静けさが周りに広がる。暖かな朝日はゆっくりと近づき、朝を告げる。まだうつろな大きな瞳を光が照らしていた。私は、身じろぎをしながら少しずつ体を起こすことにした。
「ん~っ。」
こんなに晴れやかな朝はいつぶりだろう。しばらく邪魔者は来ないし、勉強にダンスの稽古に集中できる。一応お嬢様な私は覚えることが多い。
しかし、もし今後バッドエンドを迎えなかった場合、逆にやりたいこともないので困ってしまうな。 あ、これはどうだろう。まず、わざわざ自分から素直にストーリーに合わせなきゃいいんだ。今から家出するか。ダメだ、お父様が血眼になって探してしまう。小さい頃は気づかなったけど、親ばかというよりかなり過保護みたいだ。そのためかアリミナールの私は、ほとんど外に外出させてもらえない。だからこそなのか王子たちの訪問を断ることはない。同年代の友人もいなければ、お嬢様友達もいない。今までそれに対して文句はなかったが、そろそろお年頃だしお父様に聞いてみるか。
コンコン。
「入れ。」
パタン。静けさが広がる。屋敷の主は本に向けていた目を扉に移し、手を止める。
「アリー!なんだ声をかけてくれればいいのに。」
「・・・お父様?お願いがあります。」
「なんだい?なんでも言ってごらん。」
「あの!」
「ああ、そうだ!アリーに手紙が届いていたよ。ほら、この前いらしたガイ様からみたいだね。」
「手紙?」
それを受け取ったアリミナールはその場で手紙を開く。
「これは!・・お礼のお手紙ですね。お父様、私お返事を書くので失礼しますね。」
「え?アリー?」
パタンと扉が閉まった。
「これは、ガイ様からの招待状!?先日のお礼に城内の案内をします、明日迎えを向かわせますのでってなにそれ?」アリミナールは固まっている。
「アリー?おや、ガイ様からの手紙がもう一つ、アリミナール嬢を自宅に招待したく・・・なんだとっ!?そ、そんな、隣国とはいえ城からの招待を断るわけにはいかん・・。やはりアリーは、うおぉぉ~!!」
「だっ旦那様!なに泣いているんですか!」ブラックレス邸の主人は涙を流しながら、隣にいる使用人に慰められている。
「「アリミナール(アリー)の身に何か!」」体に寒気が起きたことで、何も知らないはずの兄弟が再度テレパシーを使った瞬間である。しかし、テレパシーは存在しないため気のせいだと考えていた。