第百七十三話 家政婦じゃなくて悪役令嬢は見た?
アリミナール、ケイン・ガイの3人が建物の影から覗いている光景が出来上がってしまった。
うん。王子様二人を引き連れて、悪役令嬢が覗きをする異様な空間が出来てしまった。いや、意図したわけじゃないけど。ああ、覗きは犯罪じゃないとか変なこと考えるから罰があたったのね。
アリミナールは大きく一呼吸した。
「ケイン様、ガイ様、このような覗き行為は犯罪ですよ。今すぐご帰宅なさったほうがよろしいのではないでしょうか?」
真剣に伝えたつもりなのだが、軽く笑われた気がする。
「僕ら二人が帰宅した場合、アリーだけが覗いていくつもりなのだろう?これが犯罪なら、一緒に犯罪者になってあげるよ。」
「・・ふはっ。これが犯罪なんて生温いな。グランに怒られるくらいどうってことないだろう。」
なんか優しい言葉を言われた気がするが、要は同じ罪を背負ってくれるってことなのか?王子様なら、この行為を止めるべきではないのだろうか・・。ああ・・ますますわからないよ。っていうか、遠回しに邪魔だから帰ってって言ったつもりなんだけど。鈍いのかな?
「アリーがまた一人で考え事している。」
「・・グランを覗きに来たのか?」
「いや、あの子だよ。勉強会の時の。」
そう言ってケインがグランの先にいるリリーダを指し示した。
「・・またか。ケイン、アリミナールのためとはいえあの約束はやめたほうが良かったんじゃないか?」
ガイの一言に難しい顔になるしかなかった。
アリミナールが考え事をしている間も、グランやリリーダ方面のやり取りは続いていた。話し声までは聞こえないが、人の動きは確認できる。
「アリー、兄さんが動き出したよ?」
「え?」
「・・何か受け取ったようだが?」
目視では何を受け取ったかまでは把握出来なかった。
「う~ん。何かご令嬢たちから受け取ったようですね?ですが、和やかな雰囲気には感じません。あの方たちは何をしているのでしょうか?」
冷静に分析をしていた。
「・・グランがいるのだし、直接聞いてはダメなのか?」
「ガイ様・・ダメですよ!」
なんて危険行動なんだ。だってここはリリーダの正念場だよ?ここに来て攻略対象者が動き出すってことは、何かイベント発生かもしれないし。
「まだ、様子を見ましょう。」
そう言ってアリミナールは、視線をグラン・リリーダ方向に戻した。
そして、何かに気づいた。
「きゃーっ!?」
思わず叫んだ自分の口を自分で塞いだ。




