第百七十一話 考えるより行動するのみ
一人で帰る選択をしたアリミナールは、すでに後悔をしていた。寮の方角に向けて歩いていたが、その足が止まった。
いやいや、友達を置いて帰るのはどうだろうか。毎日迎えに来ていたリリーダが、私を置いて帰ることはありえないし。でも、もし攻略に関わる行動をしていると考えると下手に関わるのは悪役令嬢としてバッドエンド一直線ではないか?というか、バッドエンドとか関係なく友達を置いて帰ること自体が最低ではないか!?
ぶつぶつと独り言を唱えながら、アリミナールは思案していた。
そんな時に限って現実に引き戻される。
「アリー。」
ぽんっ、と肩を叩かれた。びくりとしたが、愛称で呼んでくるのはこの学園でただ一人だけ。
「ケイン・・様?」
輝かしい笑顔でこちらを見てくる。
「誰か待っているの?」
ぶんぶんと首を振った。
「そっか。少し、話せないか?」
ぶんぶんと首を振った。
「どうして?」
いつもの問答になりつつある会話をしながら、どうやってケインを撒こうか考えていた。
ああ・・悪役令嬢の役目故なのか・・・どうして邪魔ばかりしてくるんだろう。こんなことやっている間にも物語が進んでいるかもしれないのに。
そうか、覗きは犯罪になりますか?いいえ、なりません!どのくらいの進展があるかくらいは覗いてもいいかな~。というか、前から考えていたけどせめて攻略対象者が知りたい。こんなに近くにいるのに、リリーダのこと何も知らないのよね。
ああ・・ここにケインがいるってことは、今のところリリーダの相手はケインではないってことなのね。ごめんなさい。子供の頃、運命の人に会うとか言ったのはずれましたね。
「アリー聞いている?」
「何も聞いていませんでした。」
「いつも考え事に夢中になっているよね。僕じゃ助けにならないかな?」
「助けですか?お勉強会ではとても助けて頂きました。」
「それは、アリーじゃなくて友人の助けだろう?」
「いえ、私にとってはそれがとても嬉しいことです。ケイン様、私にはリリーダちゃんの幸せが一番嬉しいことです。こんなところで油を売ってないで、彼女のために行動あるのみ・・・ってこんなところで油を売っている暇ないんですよ!」
「え?」
「では失礼します!」
考えるより行動!そうだよ、気になるなら見に行くしかない。今までにないリリーダの行動が指し示すことなんてゲームの進行が始まったと考えていいはず!
ケインを置いて走り出したアリミナールだが、後ろからケインも追いかけてきた。




