第百六十八話 たとえば攻略対象者と主人公が約束するなら
今回のライトストーリー学園の試験は、成績にも関わる。そのことから寮から学園に向かう生徒たちには、落ち着かない生徒が何人か見受けられる。
いつもの光景、物語においてはおかしい光景。悪役令嬢と、主人公がいつものように学園へ向かう。
アリミナールの隣にいるリリーダという人間は、どこか緊張しているようにも感じる。歩いている中、その緊張感の理由をアリミナールはずっと考えている。
なにか変だ。試験で緊張しているから?それとも、ガイとケインが隠していた、何かに関わりがあるのか?あの異様なリリーダのやる気はおかしい。あの子は、とてもいい子だけれど勉強は苦手だ。そのリリーダが、1位を狙う?絶対におかしい。
ゲームの内容を思い出せ!無理!そんな記憶ない!もうほとんど記憶が曖昧で、パーティーとかどうでもいいことしか覚えてない。
「アリミナール様、実は・・・。」
「はっ!?どうしたの?」
急に意識を戻された。
「聞きたいことがありまして・・・。」
「なんでも聞いて!」
「ああ・・・。そのですね。」
いつになくもじもじとリリーダは言い淀んでいた。
「ケイン・アンジャードルタ様とガイ・ブルスタール様についてなのですが・・・。」
ついにリリーダの口から攻略対象者の名前が出たわ。これは大事ね!
アリミナールの目が輝きだした。
「あの二人って・・・。」
勉強会によって何か進展があったのかしら?
ごくりとアリミナールは息を呑む。
「よぉ!アリミナール、リリーダ!」
後ろから声をかけられた。
今一大事だったのにと、恨むように振り返るとクローの姿があった。
くっ。なんでこんな時に邪魔してくるんだ!?私に恨みでもあるのか?あ・・あるか。
「今日は試験だから、周りがピリピリしているよな~。」
何事もなく二人の会話に入ってきた。
「クロー、私たちの会話の間に入らないでもらえますか?今度こそ消しますよ?」
リリーダからとてつもなく嫌なオーラと言葉が出ている。この二人の関係性だけは一番謎だわ。幼馴染っていたことないけど、こんなものなのだろうか?
「試験前に余計なこと考えているとろくなことにならないぜ?」
「なんですか?試験なんて、どうでも・・・。」
はっとしたようにリリーダは、我に返った。
「リリーダ、お前変わったよな。」
その会話をしたクローは、去り際にアリミナールの頭をポンっと撫でて去っていた。




