第百六十五話 ずる賢い悪役令嬢は大人の扱いに慣れている
教師とナリクだけは、アリミナールの涙に反応していた。教師は慌てて説教の収集に入り、急いで終了させようとした。
パタン。
即座に職員室から3人は追い出された。そして、タイミングよく授業終了の音が響き渡る。
「やりましたね、さすがアリミナール様です!」
涙を抑えているアリミナールに対して、そんなことを言うリリーダは笑顔であった。
「ふっふっふっ。この見た目の私に勝てる大人なんて存在しません!リリーダちゃんのおかげで怒られることには慣れていますから。」
二人で笑い合っていた。
「お前らな・・・。」
二人の内容を理解したのか、ナリクは溜息をつき、少し口角を上げた。二人はそれに気づくことはなかった。
「ナリク君、ありがとうございます。」
「は?」
涙をハンカチで拭ってアリミナールは伝える。
「一緒に怒られてくれたじゃないですか。」
「はぁ?別に、お前らのためじゃない。説明が面倒だっただけだ。」
ツンしか出ていないナリクを、温かい目をして見守る。
「お礼に、リリーダちゃん手作りのこちらをどうぞ!」
本人に相談もなく、突然の切り出しだった。
「え?ああ、いいですよ。」
特に拒否をすることもなくリリーダは自分が作ったカップケーキをナリクの前に差し出した。
「いらない。」
それを真顔で拒否した。
「え!?リリーダちゃんの手作りですよ!?」
「だからなんだよ!?甘いのは苦手なんだよ。」
まさかのナリクの新情報!?そんな設定はなかった。じゃあ、ゲームの中では苦手なものを無理して食べてたのかな~。それもまたいい。
「礼っていうなら、ほらっ。」
無造作に、カップケーキが入った袋を一つ渡してきた。
「後で感想聞かせろ。」
そう言い残して、一人で歩きだしてしまった。
ナリクが見えなくなると、リリーダが口を開いた。
「なんですか、あれ?」
「う~ん。遠回しにリリーダちゃんにこれを食べてほしいってことかな?だから、ナリク君の手作りではないでしょうか?」
驚いた顔をしてリリーダはアリミナールを見つめる。
「アリミナール様のそういうところ・・嫌いじゃないです。ずっとそのままでいてください。」
「ツンデレの考えなんてわかりませんからね~。」
アリミナールの言動に、隣ではてなマークを浮かべていたがすぐに切り替えられた。
「さぁ、寮に戻って勉強の続きです!」
「はい!あ、これはやっぱりアリミナール様に!」
アリミナールの手には、もう一つカップケーキが増える。
「・・・勉強は出来ても、この状況に理解が追いつきません。」




