第百六十三話 地獄の味の行方について
自分が作ったものかと聞かれれば、そうだと頷くしかない。
「誰かに渡しに行くのか?」
「あなたにお答えするつもりはありません!」
おお、今の私って悪役令嬢っぽくなかったかな。
「なんで?」
え?あれ~なんか今日はどこ行ってもこの会話してる気がする・・・。なんで?なんで教える必要があるの?乙女の秘密ってこんなに簡単に聞いてくるものなの?
「・・たっ・・!」
どこからか突然に声が聞こえた気がする。
アリミナールとナリクは声の行方を確認しようと辺りを見回す。気配に気づいたナリクが一瞬で行動に移した。
「あっ!?上だ!」
「え?」
身長の低いアリミナールをぐいっと引っ張り、包み込むようにナリクが庇う。突然のことにアリミナールも思考がついていかず、目の前が暗くなりナリクの腕の中にいることを理解する。大きな水魔法が発動し、かなりの勢いで空中から人も降りてきた。降りてくる勢いで、アリミナールの手にしていたカップケーキが空中に舞い上がってしまう。
はにゃはにゃにゃにが!?あ、とてもいい匂いがしますね。あわわわっ、今どうなって・・・にゃーーー!
目をぐるぐると回し、体全体が真っ赤になって思考さえも追いつかないアリミナールだが、目の前に水魔法の発動を確認した。そのことで幾分か冷静に考えることが出来た。
急いで近くにいるナリクを突き飛ばし、手にしていたカップケーキの行方を目で追った。その勢いでナリクは倒れこんだ。
「ああっ!?これはまずいです!」
その言葉を発した時に合わせて巨大な爆発が発生した。もちろん、アリミナールが手放してしまったカップケーキ方向からだ。幸いなことに、爆発が起きたのは人気のないところであったが、近くにあった樹木は姿が見えない。
「見つけました!あらら、すごい爆発ですね?」
水魔法を使用して空中から舞い降りた少女はそんな感想を述べた。




