第百六十話 地獄の味とガイ
長い廊下をずっと進み、たくさんの光景を目にしてきた。
そんな私の目の前には衝撃の展開が待っていた。
「ガイ君・・あの、これ!」
「・・・。」
ガイの手前まで、その人物が作ったであろうものを差し出している光景が見えた。
あああああああああ!!!
「君に・・食べてほしくて。」
「・・・どうも。」
そっけない返事をしながら、ガイがその人物から受け取る姿を目撃した。
なぜかアリミナールは、身動きが取れなくなっていた。
うそ・・・。うそだ。あれ?そんなまさか・・。違う。違う。え?
アリミナールは一人混乱していた。
どういうこと?いいの?大丈夫なの?これ初恋レディだよね?全年齢対象だよね。あ、いや別に悪くないよ。うんうん。よくあることだよね。たぶん。
まだアリミナールは混乱していた。
攻略対象者がモテようが、誰に何をもらおうが気にしないはずだったのだが、この学園に来て一番の衝撃が走った気がした。
ガイが男性からもらっていた。友達というには距離感がおかしい、相手はどうみても恥ずかしそうに渡している姿をみれば、本命に渡すかのような光景であった。
すぐにアリミナールがいることに気づいたのか、慌ててその人物は逃げてしまった。
「ふ、あはっ。」
自分がこんなに混乱していることや、緊張が解けたためつい笑ってしまった。
「・・・っ!?アリミナール?」
「あ、ごめんなさい。邪魔をする気はなくて・・。」
「・・邪魔なんかじゃないよ。」
笑顔でこちらにやってくるガイに、少し安心する。
つい笑っちゃったよ。バカにしたわけじゃないよ。むしろさっきの人を応援してあげたくなるほど邪魔してごめんねって思っているから。禁断の恋なんて素敵なことじゃないかな。これ乙女ゲームだった気がするけど。ある意味乙女。うん。
「・・どこかに行くのか?」
「え?あ、秘密です。」
「・・なんで?」
ここにもまた空気の読めない王子様がいた。
「それは・・ちょっと言えないというか・・。」
少しほほを染め上目遣いで視線を合わせてから、すぐに視線を外した。
「誰のところに行くつもりだ?」
空気の読めない王子は再度聞いてきた。
むぅ。しつこいな。
「だから・・。」
ガイとアリミナールの様子を伺うように、数人のご令嬢たちが立ち止まっていた。どうやらガイに渡すものがあるらしい。
そのご令嬢たちにわかりやすく手招きしてあげることにした。その動作に合わせて、ガイもご令嬢たちの存在に気づいたようだ。
囲まれたガイを置いたまま、アリミナールは去っていく。




