第百五十八話 地獄の味とリリーダと?
「アリミナール様!!!!」
がばっと後ろから抱きしめる人物がいた。
「きゃぁぁぁ!?」
突然のことに悲鳴をあげてしまう。
「えへへっ。」
幸せ全開の笑顔でリリーダはアリミナールを抱きしめる。
「リリーダちゃん!?どうしたの?試験までは・・。」
そう言うと、とても悲しそうに目をうるうるとさせた。
「だって・・・だって・・・。」
「・・?」
「今日だけは特別なんです!」
「とくべつ?」
「これをアリミナール様にお渡ししたくて!」
「・・・。」
アリミナールの目の前には、シンプルだけれど、とても綺麗に出来ているカップケーキが見えた。
違うでしょ?いやいや、ゲームでの主人公がこのイベントあったか知らないけど、私に渡したところで悪役令嬢からの好感度上げてどうする!?
「リリーダちゃん・・・考えなおして。」
「え?」
「選択肢は無限にあるはずよ!」
「え!?」
「まさか・・女の戦場から逃げてきたというの? こういうイベントごとをサボって、主人公やろうなんてばかやろうだよ!」
「戦場がどこかにあるのですか?」
「心で理解して!」
「え・・わかりません。」
「だよね!」
「えっと・・つまりどういう?」
「自分に素直になろう。心に手を当てて、今一番これを渡さなければいけない人がいるんじゃない?」
リリーダは素直だ。特に意味もないのだが、言われた通りに胸に手を当てて考えてくれる。
「はい!わかりました!」
「渡す人が決まったようね!」
「はい!アリミナール様です。」
がくりとアリミナールは肩を落とす。
なぜだ?ここまで来てまだ攻略対象者が決まっていないことなんてあるのか?それとも恥ずかしいのかな・・。女の子から攻めるなんて普通に恥ずかしいよね。うん、恥ずかしがっているリリーダも可愛いから大丈夫。
「私はもうお腹いっぱいだから!しっかり渡す人考えてね!それじゃ。」
リリーダの止める声も聞かず、走り出した。
走り去った廊下の角に2人の人影が現れる。
「あ、走っていかれましたよ!」
「はぁ、はぁ、どうしよう・・どうしよう。」
「話しかければいいのではないですか?」
「友達でもないのに!?」
「・・そうでしたね。」
「どうしましょう。」
高貴な身分でもあるはずのご令嬢は、蹲ったまま立ち上がろうとしない。それを見てまたメイドは溜息をつくのだ。
走って廊下を通り過ぎるアリミナールに、また一人近づく人影がいた。




