第百五十六話 地獄の味は完成する
アリミナールは、調理中に魔法は使用していない。それでも料理が出来ないのは、もう呪いなのだろうと自分では諦めている。爆発を起こすたびに教師の表情は真っ青になっていく。しかし、意外と周りにいるクラスの方々は逃げたり、怒ったりすることなく自然現象のように5回目の爆発からは自然だった。爆発と言ってもアリミナールも一切怪我をしないし、ボウルの中だけで済んでいるからなのかもしれない。
23回目の爆発を終え、やっと完成したものをオーブンに入れる作業までたどり着いた。教師は、ほっと一息つきたいところだろうが、アリミナールにとってはこれからが本番だと思っている。オーブンの中では小さな爆発が起きていることに、アリミナール以外誰も気づいていない。
時間になり、オーブンから出した時にはほとんどが黒い液体になっていた。カップケーキのようなものを作っていたのだが、なぜドロドロのものが出来てしまうのだろうかと教師は本当に不思議そうにアリミナールの完成したものを見ていた。しかし、その中にも見た目綺麗に出来上がったものが数個存在する。それに対しても教師は不思議そうに眺めるしかなかった。
「え~では皆さん。毎年この手作りにおいては、ご自身がお世話になっている方などに送る方もいます。普段調理に関わることのない皆さんには新鮮だったと思いますが、作り手の気持ちを知る機会になったことと思います。1学年はすべて調理実習を執り行っているので、交換をしてもいいかもしれませんね。では、これで終了となります。」
クラスの女性陣からは、きゃあきゃあと騒ぐ声が広がっている。さっそく誰にあげに行くか考えているようだ。
最後の教師の一言は余計なことを言ってくれるなとアリミナールは考えていた。
黒くドロドロしたものはさすがに捨てた。この学園では片づけは必要性がないようで、散らかした調理器具たちはそのままの状態で置いてきた。そして、残った見た目綺麗なものを袋に詰め調理実習室を後にする。
アリミナールはそのまま調理実習室を後にしたため、白いエプロンを付けたままだということに気づいていない。髪型もポニーテールのまま、ぴょこぴょこと歩き出した。
アリミナールが歩き出した頃、同じように追いかけてくる人物がいた。




