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第百四十六話 誘惑に弱いのです

そして時は、現在に戻る。


「あ、俺の声聞こえた?」

アリミナールと話す気なのか、前にある席にわざわざ座ってクローは目線を合わせてきた。


「リリーダは今日いないんだな?」

さすがに、ここまで直接聞いてくるとアリミナールも答えざるを得ない。

「・・・はい。」

「なぁ、アリミナールは子供の頃からリリーダと一緒だったんだよな?」

まだ、会話の少ないクローに名前を呼ばれるのは慣れないなぁとアリミナールは考えながら、返事をした。

「はい。」

「じゃあ、この学園の食事に飽きないか?食堂の食事は豪勢だし。」

確かに、と考えていたアリミナールの表情を見て、やっぱりそうだろうとクローは自分で納得していた。

「食堂の人がさ、近くの町でお店を開いている人でさ、今日特別に簡単な食事用意してくれるっていうからリリーダを誘おうかと思ったんだ。」

「是非そうしてください!」

アリミナールは食い気味に答えた。


幼馴染だからこそ気づける視点ね!クロー君やるじゃない。


「忙しいみたいだぞ?」


ああ、そうでした。勉強しろと言っているから、一人だし。たぶん今日はお弁当持参じゃないかな。私のバカ!いや、クロー君のバカ!タイミングを考えてよ!


「アリミナール食べないか?たくさんもらうのは嬉しいが、この学園のやつには口が合わないだろうし。無駄にしたくないんだ。」


はぁ、優しいね。だが、こんなことではアリミナール・ブラックレスは動きませんよ。


ぶんぶんと首を振る。


「今日だけなんだぜ?揚げたての食べ物とか食べたくないか?食堂だと目立つから、裏でもらう予定になっているから誰かに見られる心配もない。」


うぐぐっ。そういえば私は昔から自分に甘い性格をしていた。もらったら一緒に食べるわけじゃないし、貰い逃げすればいいかな?


そうしてアリミナールはコクリと頷き、ニヤリと笑ったクローについて行くことにした。何か負けた気がしたアリミナールは、不機嫌になっていた。ぬいぐるみはそのまま、自分の席に置いていくことにする。


普段、学園の生徒は通らないであろう裏道のような道を、クローと共に歩いた。無理に話しかけてくるようなことはなく、クローを先頭として案内してくれた。そして、おそらく食堂の裏になる場所で食堂のおばさんらしき人物が待っていた。


「あらあら、カワイイ子連れちゃって!」


近所のおばさんのような人当たりの良さそうなおばさんに、アリミナールはたじろぐしかなかった。アリミナールは無意識に、クローの後ろに隠れるようにしていた。


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