第百四十五話 わがまま姫のストーカー理由②
メイドはレイが何を言わんとしているかを察してしまった。先ほどまで怒っていたのであろうレイが、何を思っているのか察したうえでまた溜息が出る。
レイとしては珍しく自分で動いており、『ちびっ子』のクラスを突き止めクラスのご令嬢たちに話しを聞きに行っていた。おそらく、聞きに行ったご令嬢たちが悪かったのだとメイドは後で後悔することになる。とても身なりの良いご令嬢たちだったので、メイドは何も口出しをしなかったのだが、なぜか『ちびっ子』自慢が始まったのだ。
それを食い入るように聞いていたレイは、うんうんと頷くばかりだ。
メイドは、とりあえず内容を全て聞いたところ、アリミナール・ブラックレスという人物は危険人物ではないと判断した。
ご令嬢たちは、レイをアリミナールのファンだと勘違いしたのか、今後の動向も教えてくれると約束していた。レイの名前を出すと少し驚いていたが、握手を交わしていた。
そして『チーム協力型、体力測定』は、終了の合図を告げた。
「レイ様、お待たせいたしました。」
「待っていたわ。さっそくちびっ子のところに行くわよ。」
『チーム協力型、体力測定』の翌々日、レイ・シルバスタントとそのメイドは寮で準備を済ませていた。二人が向かったのは、もちろんアリミナール・ブラックレスの元だった。しかし、その日はアリミナールが出かけてしまっているため本人は不在であった。
「レイ様、不在のようです。」
これで諦めて帰るものと考えていたメイドだったが、レイはそれを止めた。
「昨日聞いた話では、ちびっ子のことに一番詳しい人間がいるわ。会いたくはないけれど、このまま帰るのも・・・。」
少し悩んでいたようだが、レイはすぐに行動に出た。
寮の中、一人で写真を眺めながら悶えていたリリーダ・キャラベルがいた。そんな彼女の元に訪問客がやってきた。
扉を開けたリリーダの前には、見知らぬご令嬢がメイドを連れて現れた。
メイドがリリーダに挨拶をして、簡単に訪問についての説明をした。
二人を自室へと招いてくれたのだが、これが大きな間違いの始まりだということにメイドは気づいていなかった。レイはアリミナールについて聞こうと、遠回りに質問していたのだが、何を勘違いしたのかリリーダ・キャラベルという少女は2・3時間にも及ぶ時間、ひたすらアリミナールの可愛さを説いていた。はじめはレイも戸惑っていたが、途中からうんうんと頷きながら聞いていた。その姿のレイを見て、メイドの溜息が止まらなくなった。
その日、レイが何かを購入しようと画策していることをメイドは把握した。
二人が帰った後のリリーダは、『あの人たち誰だったのでしょうか?』とあまり気に留めた様子はなかった。




