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第百四十四話 わがまま姫のストーカー理由①

それは、『チーム協力型、体力測定』の昼休憩の時間まで遡る。静かな教室で一人、取り残されたご令嬢がいた。


ダンっ!


近くにあった机を両手で叩いた。静かな教室にはその音だけが響き渡る。


「なんですの!私のことを知らないくせに。何も知らないくせに!あのちびっ子、許せませんわ。一言・・絶対に言わないと気が済みません!」

息を切らしながら叫んだが、そこには誰もいない。


呼吸を落ち着かせ、教室から出る。扉には、ご令嬢にとってはいつもの人物が待機していた。


「レイ様!探したのですよ!」

メイドは、使えているレイ・シルバスタントが下を向いていたため、不思議そうにのぞき込む。

「許せません。あのちびっ子を探しなさい!」

「ちびっ子・・?どなたのことでしょう?」

「ちびっ子は、ちびっ子ですわ!」


メイドは、なにやら考え事をしていた。


『レイ様は、確かグラン様を探していたはずでは?でもグラン様の名前を出せば、ややこしいことになるかも知れませんね。ちびっ子?私のいない間に何かあったのでしょうか?でも、グラン様のことを忘れているようなら好都合ですね。よし!』


「相手のお名前をご存知ではないのですね?では、競技中であれば出てくる可能性があるので、その時に教えていただければと思います。」

「ええ、そうね。わかったわ!さぁ、行きますよ!」

ずかずかと一人で歩き出したレイにメイドは急いで追いかけていく。


昼食を要らないと宣言するレイに対して、なんとかメイドが説得して昼食を食べ終えたが、開始された競技を食い入るように見るレイに、メイドは溜息をつく。

その件の人物である、『ちびっ子』はそう時間がかからずに発見することが出来た。


「あれ!あれですわ!」


レイの言葉に反応してメイドがその人物を確認する。


「レイ様、あの方は魔法の特異体質・・・あの方に関わるのは危険です。」

メイドの忠告を無視してレイはその人物を眺める。

「あれは、何をしているのです?」

「え・・!?えっと、あれは『仮装競争』だったと・・。」

しばらく見ていると、そのちびっ子と呼ばれる存在はお題の用紙を眺めている姿を捉えた。

「あ、動き出しましたわ。」

心配するメイドとは裏腹に、なぜかレイは実況をしてくれる。

「もう、あんまり急ぐと転んでしまいますわ・・・か。」

「まぁ、あんなに大きなぬいぐるみを持って・・・わ。」

「大変、大きすぎて前が見えていないのでは・・・い。」

「あら、なんとか衣装も決まったようですわ・・・い。」


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