第百四十三話 共犯者による密会
アリミナールのクラスでは、食堂組と、お弁当組の二つにほとんど分かれている。専門のシェフがお弁当の用意をすることは当たり前であったが、数名の許された使用人しか入室は許されていないため、クラスの人以外は教室にはいない。教室でも楽しく食事をしている人は存在している。
その中でも、ぬいぐるみを渡したご令嬢たちの数人は、楽しく食堂でのひと時を過ごしている。
彼女たちは授業の内容や、食堂の食事の感想など他愛ない会話を繰り広げていた。
なぜかピタリとそのご令嬢たちの会話は止まることになる。
急に静かになった彼女たちだが、食堂にいる周りの人は食べることに集中している、誰も目もくれない。しかし、そのご令嬢たちの後ろになる席に自然に、一人と付き添いの使用人であるメイドが現れた。
ご令嬢の後ろに座った人物は、銀髪に銀の目をした可愛いというよりは、美しいと言ったほうが正しい。肌も白く、どこかのお姫様の絵本に出てきそうな外見であるが、目つきはちょっと悪い。
二人が食堂の席に着くと、メイドは食事の準備をすぐに済ました。
そして、周りには聞こえないように、少し声を抑えての会話が開始された。
「・・・例の物は?」
「滞りなく。」
「そう。相手の反応はいかがでしたか?」
「喜んで居られましたわ。」
「そう。他に報告事項はありますでしょうか?」
その一言に報告していた人物が少し間をおいて答える。
「・・・はい。」
「なんですの?」
ふるふると報告していたご令嬢の身体が震えだした。周りでは、他のご令嬢たちも何事もなく報告を聞き入っていたが、震えだした報告者のことを心配そうに見つめる。一呼吸おいてからその報告者は口を開いた。
「・・わいい。」
「え?」
「もう本当に、胸が締め付けられる思いで!とにかく素晴らしい選択だったとしか思えません!」
気の高ぶったご令嬢を周りのご令嬢たちが止めに入る。それによって深呼吸したその人物は、いったん落ち着くことが出来た。
「失礼いたしました。以上です。」
突然興奮した人物に驚いていたが、すぐに返事を返す。
「・・そう。」
銀髪の少女は、何事もなかったように食事を開始する。
近くに控えていたメイドは、大きな溜息をする。メイドが視線を銀髪の少女に向けると幸せそうに食べている姿を確認し、それを見たメイドはまた大きな溜息をして笑った。




