第百三十九話 休憩する頃に
ゲームの世界では、学園内の全貌が見えていなかったが、生徒としてライトストーリー学園の中を見ていたアリミナールは、入学してからしばらく経つのでどの場所が人通りの少ない所かわかってきた。
校舎裏にあたるベンチに一旦腰掛けることにした。
ベンチに座る自分の横に本を置いて、伸びをした。そこには明るい空が目の前に広がる。お出かけ日和のような陽気に安心して笑顔になる。この場で絵本を1冊だけ読もうと、一冊選んで膝の上に置いて、掌で絵本の表紙をなぞる。この学園においての絵本の価値は低いのか、あまり誰かが読んだ跡はなく、新品同様に新しい絵本であった。絵本を顔に近づけてつい匂いを嗅いでみると、やはり新品の本の匂いがした。
パラパラと絵本をめくり、少しずつであるが時間が過ぎようとしていた。いつもより早起きしたアリミナールは、この温かい陽気についウトウトとしてしまう。自分の中では眠っている感覚はないのだが、自然と瞼が重くなった。
例えば、授業中にどうしても眠気が襲ってきて、こくりこくりと揺れて、横になりたいためなのか首が動いてしまう。でもそんな時はやっぱり普通に眠っている時より気持ちの良い眠りかもしれない。いったん目が開いても、やっぱりまた何事もなく目を閉じてしまう自分がいる。
アリミナールは、一度目を開いて誰かを見た気がした。知っている誰かを感じた気がした。眠気に負けて、こくりこくりと揺れていた首が何かに支えられる。眠気が強いため、アリミナールには支えられている感覚がなかった。
ベンチに座るアリミナールの横に置いてあった絵本は、移動されていた。隣には、絵本ではなく、支えとなる誰かが座っている。隣の支えは、本を適当に開いて読み始める。
薄い意識の中、重い瞼をパチパチと動かす。
「起・・?ね・け・・・?」
「もう・・は行くか・・。」
なに?誰?なんで笑ってるの・・クロ・・ん。
またアリミナールは眠りにつく。
はっとして、アリミナールは起き上がった。その拍子に膝の上にあった本を落としてしまう。授業中に眠ってしまう時間は、本人にとっては意外と時間が長く感じてしまう。アリミナールもどのくらい自分が寝ていたのかわからずに一瞬は混乱していたが、眠っている時間は短い。
落とした本を急いで拾い、ベンチに置いていた本にも手を伸ばそうとする。そこでアリミナールは本が移動していることに気づく。疑問には思ったものの、本をまとめて寮に戻ることにした。




