第百三十七話 有効活用できない二人
「・・・。」
しばらくすると、お弁当の準備はすぐに終了してしまう。
一人は、教科書を開きペンを使用してマーカーを引いている。すでに午後の時間は過ぎているが、この後の勉強会の準備をしている。
一人は、一枚の写真をポケットから取り出し、ずっと見つめている。ただそれだけのことなのに、幸せな顔をしている。
しばらくその時間は続いた。我関せずという姿勢で、お互い暗黙の了解となっているかのようだ。
そして予想よりも早く、教室の前に戻ってきた二人。
アリミナールは余計な心配をしていた。
もしかしたら、リリーダとケインは仲良くしているかもしれないし、教室に入る時はノックでもするべきかもしれない。これ、人として同然の気遣いよね。気まずいのが嫌なだけだけどね。
アリミナールのそんな考えを無視したかのように、ガイが手を伸ばして教室の扉を開けてしまっていた。
「あ・・。」
思わずアリミナールは声が出てしまった。
ガイは何事もなく教室に入っていく。しかし、アリミナールは疑問の表情をする。リリーダはお弁当のある席にすでに座っている。そして、教卓のほうにはケインが教科書を持って待ち構えていた。二人の距離は遠い。お互いに、すぐガイとアリミナールの姿に気づいていた。
う~む。どう捉えるべきなのか・・。私が悪役故に、思い通りにはいかない的な?それとも、ケインは攻略対象者ではなかったから?いや、今は距離があるだけで、二人で楽しく会話していた可能性もあるよね!
二人には、生徒会のお手伝いをして飲み物を手に入れた経緯を簡単に説明した。そして、リリーダが作ったお弁当をやっと食べ始めた。ケインとガイは、予想通りに嫌な顔ひとつしていない。
自分で言うのもなんだが、リリーダは料理が得意だから自信がある。これは良いお嫁さんになるよ!それに比べ、私はほとんどの食べ物を爆発、または炎の産物にしてしまう。そして、何より不味い。料理が嫌いではないけど、リリーダとは大違い。
アリミナールは、美味しいお弁当を食べて嬉しそうな表情になっている。その姿を隣で眺めていたリリーダも表情が柔らかくなる。
後半の勉強会もリリーダは真剣に行っていた。少し離れた席で、アリミナールはまたサボっていた。その姿をたまに眺めては、集中して勉強にやる気を出すリリーダがいた。そんなリリーダの姿を見ていたケインとガイは、残念な子を見るような表情をしていた。サボっている誰かは、何も気づいていないようだ。




