第百三十三話 悪役令嬢みたいな?
「アリミナール様は、どなたを追いかけたのですか?」
「知らない女の子がいて・・そのまま食堂に連れて行かれて・・そんなことより。この惨状はどうしたのかしら?」
納得していない顔をするリリーダを見なかったことにした。だって、あのお姫様はリリーダの敵かもしれないし。
アリミナール・ブラックレスは、教室の机に無残になったお弁当箱を見ている。
「あ、あの・・・ごめんなさい!私が食べてしまったのです。」
申し訳なさそうにリリーダは縮こまっていた。その姿にアリミナールは怒ることはせず、優しい笑顔を向ける。
「いいのよ。私、リリーダちゃんの作るお弁当楽しみにしていたの。今から頂きましょう!」
「え、でも!」
自分が食べ散らかしたお弁当を食べさせるなんてと言わんばかりに、リリーダは否定しようとした。
「だってこれはリリーダちゃんがみんなのために作ってくれたお弁当ですもの。ね?」
「はい。」
私が作ってほしいと言っていたお弁当だけど、【みんなのために】という言葉が重要なのよ。こんなに散らばった原因はわからないけど、主人公が作ってくれたものに価値がある。攻略対象者なら、どんな状況でも主人公が作ったものを食べない選択はしないでしょ。さぁ、ケイン、ガイそうでしょ?
呆然と何も言わない攻略対象者にしびれを切らしたアリミナールは、自分の役割を思い出したかのように二人の王子にこう投げかけた。
「お二人も、散らばっているからと言って、みんなのために作ってくれたこのお弁当を無駄にするようなことはしませんよね?」
ちょっと強引だったかな。でもこれでこそ悪役令嬢の出番みたいじゃない?リリーダにいいところをみせるチャンスなんだから!
「・・そうだね。アリミナールは良い子に育ったね。」
うっ、ガイの希少スマイルだと!?そういうのはリリーダに向けなさい。そして頭を撫でるな!私は子供じゃないって!どうだろう、この頭にのせられた手を振りほどけば、悪役令嬢っぽいかな。そしてあわよくば追放ルートが一番いいんだけどな。いや、なんか私にも良心的なものは存在するからな。やめておこう。どうせなら、あのお姫様からの追放ルートがあれば幸せ計画になったのにな。というか、アリミナールに追放ルートって存在したのかな?バッドエンドしか知らないな。ある意味どんなことをしようと追放ルートが存在しないのは、やりたい放題だな。どうせなら私がゲームの達人で、思い通りに事を運ぶことが出来たなら良かったのに。どうして私はゲーム下手くそなんだろう。あでも、これが転生して世界を救う勇者とかなら、速攻デッドエンドだと思うからそこは良かったと思うべきかも。




