第百二十七話 初恋レディですか?
アリミナールに渡された本をリリーダは手に持っていた。
そんな時、アリミナールは誰かの視線を感じた気がした。そして辺りを見渡して、借りている教室から誰かが覗いていることに気付いた。
「誰ですか!?」
そう言ってアリミナールはその人物を突き止めようと走って追いかけるが、気づかれた人物はそのままそこから逃走を決めたようだ。そのまま、アリミナールはその人物を追いかけはじめた。
「アリー!?」
「アリミナール!」
ケインとガイもアリミナールに続いて追いかけようとしていたが、何が起きているか理解していないようだ。
少し遅れてリリーダも状況を把握したのか、3人の後を追うことにした。その手には、さきほどアリミナールから手渡された本も持っていた。
「・・あれ?」
「おかしいな。すぐに追いかけたから、見失うはずないのに。」
ガイとケインは、すぐにアリミナールの後を追いかけてきたのだが、あっという間に消えていた。二人は、教室を出てすぐ階段を上っているところまではアリミナールの姿を捉えていた。そのあとに消えてしまった。阿吽の呼吸でケインはその階を調べることにして、ガイは階段をさらに上って調べ始めた。
「んん~。」
「しっ。まだ静かに。」
二人の王子は気づかなかった。見失った階の廊下の窓が開いていることに。
リリーダは、3人の後を追いかけていた。
階段を上る前に、リリーダの目の前に人がいきなり現れた。それには気づかずに走って、その人物と衝突してしまった。
「きゃっ。」
衝突した衝撃で、本が飛んでしまった。
「危ないだろうが!」
知らない人物相手にいきなり怒鳴られたとリリーダは感じていた。しかし、どこかで見たことがある顔だと思った。
その人物は、リリーダがぶつかった衝撃で倒れていたので、起こそうと手を差し伸べてくれた。リリーダを引き起こすと、落とした本を拾いにいってくれる。そして、その本をリリーダのほうに持ってきて、手渡してくれるのだと思っていた。本を見て、その人物は少し時が止まっていた。
「これ、お前のか?」
ナリク・グルテンは、本を渡さずリリーダに質問した。
リリーダは急いでいたため、適当に答える。
「そうです。」
内心、アリミナールのことが気になって仕方ないので焦っている。
「読んだのか?」
「いいえ!」
早く追いかけたいのに、なんで質問してくるんだとちょっと怒鳴っているように返事をした。
「急いでいるので、その本返してください!」




