第百二十六話 悪役令嬢はサボりたい
ガイは、ケインとリリーダのほうに行き、基本はケインに問題集の重要部分を抜粋して補助に回っていた。このガイの抜粋が、とてつもない的中率をたたき出したことは、後にわかることであった。
暖かな日差し、緩やかな時間、勉強が出来てしまうアリミナールは、3人のことを忘れて寝ていた。
問題集を開いて机の上に立てる形で、うつ伏せになっていたので気づかなかったが、近くで見ると、立てられた問題集の奥には開いている本があった。どうみても問題集や教科書ではなかった。寝ているアリミナールの頭を軽く叩く人物がいた。
「ふにゃっ。」
「アリー、何遊んでるの。」
「えっと、これは、秘儀・・勉強している振りという昔ながらの法則で・・。本来は早弁とか隠す・・。」
眠そうな目で寝ぼけ眼で答えているアリミナール。
「くっくっ。」
思わずガイも隣で笑っていた。ケインも笑った後に、ごほんと咳払いをして表情を戻していた。
「由緒ある学園で、こんなことをするなんて。これで勉強が出来るんだから文句はないけど。」
はっと気が付き、アリミナールは夢現だったことに気づいた。何を話していたか覚えていないのか、きょろきょろと周りを見渡していた。
「アリミナール様!」
リリーダもすぐ近くに来ていた。
「リリーダちゃん、勉強のほうはどうですか?」
「順調です!もうお昼のお時間です。また午後も頑張ります!」
「うん。頑張って!で、ご褒美は何をもらうの?」
「はい!・・・何も?」
目が泳いだ。笑顔でリリーダに嘘をつかれた気がする。寝ぼけていてもわかることはある。
「アリミナール様、この本は何ですか?」
「月夜の花よ。知っているでしょ?」
リリーダは、アリミナールが隠れて読んでいた本に気づいて、話しを切り替えようとしていた。そしてアリミナールは、主人公であるリリーダは当然のようにこの本について知っていると考えていた。
「知らない本です。有名なのですか?」
アリミナールは固まってしまった。
え?何がどうしてこうなるの?この本について知らないと、ナリクの攻略は始まらないのよ!?ルート?ルートが違うとこうなるの?ナリクルートも考慮して、この本を渡しておこうかな。
「とても面白いから、ぜひリリーダちゃんも読んでください。」
そう言ってアリミナールは、リリーダに本を手渡した。




