第百二十三話 攻略とはそれすなわち
とある学園の寮の一室、アリミナール・ブラックレスは真剣であった。部屋にはアリミナールとリリーダが揃っていたが、お互いまだ制服のままであった。
「すべては言葉の選択である!相手の思考を探り、少しずつ距離を縮めることが攻略の最重要事項である。焦ってはバッドエンド!」
ベッドの上に立ち、アリミナールは意気揚々と拳を掲げていた。これは乙女ゲームにおいての攻略ポイントを叫んだに過ぎない。
「攻略?ばっと・・?」
「リリーダちゃんの可愛さは武器よ!最大限に生かしましょう。」
「武器・・?魔法じゃダメですか?」
攻略対象者を殺す気か!?いや、きっと唐突すぎて理解できていないだけね。天然ちゃんめ。
「①何事もそつなくこなして、周りの気配りも忘れない完璧王子な人。」
「②輝く笑顔は心温まるよう。兄弟を大切にしていて、甘え上手な人。」
「③ちょっと無口だけど、仲良くなると口数が多くなる。友人を大切にする人。」
「④言葉使いは悪いけど、本心では周りを心配している。誰よりも優しい人。」
「⑤誰とでも仲良くなって、困った時には必ず手を差し伸べてくれる人。」
「リリーダちゃんは今の中ならどんな人が一番いいと思う?」
これが、変な乙女ゲームじゃなくて良かったよね。例えば、ヤンデレキャラがいないだけ有り難いと思うべきなのかもしれない。ツンデレは正義だけど、ヤンデレは悪意だよ。
「あの私、勉強の相談に来たはずなんですが・・?そしてそのよくわからない人選は何かあるのですか?もし、誰かを想定しての質問なら、どの人もアリミナール様には相応しくありません!」
「えっと・・相応しくない?それ私の台詞なんだけど・・。」
違うか。リリーダの好みを知ろうとしただけなんだけど、アリミナールである私の名台詞とられたな。ゲームでもアリミナールは、主人公と攻略対象者との関係に対して、登場するたびに相応しくないって言っていた。まさか主人公からそんな言葉が聞けるとは。関心している場合じゃないか。
「アリミナール様!一体どなたのことが気になっているんですか!?」
「何のこと!?」
二人の会話が噛み合うことはない。
やはり、友達と言っても悪役令嬢と主人公が仲良く恋愛相談なんてありえない話しだったのね。好みのタイプさえわかれば、勉強会に呼ぼうと思ったんだけど作戦は失敗ね。久しぶりによく喋ったから疲れたわ。




