第百八話 対抗策は消える
困ったような笑顔を向けてノイシー・キャラベルは答えた。
「う~ん。前にも言ったけど、呪いなんだよ。心を操作することは、とても危険だと話しただろう?予想では、しばらく体調を崩すと思うよ~。それだけであればいいけど。」
「・・・。」
さらにノイシー・キャラベルは続ける。
「アリミナールちゃんの年代は、好きな人くらい普通にいていいと思うんだけど~。何がそこまで君を不安にさせるんだろう?お嬢様である君には選択権がないことを心配しているの?」
「心を・・・恋心を入れ替えるなんて普通はしないよ?」
「そうですね。間違いであることは承知していました。いえ、リリーダちゃんのおかげで気づかされました。それが運命なのか・・それとも・・。」
アリミナールは、思考を中断する。
「好きな人が出来たとは限らない。」
真剣な表情をしていたが、ノイシー先生には聞こえていない。
「今の年代なら、たくさん恋したほうが楽しいよ~。」
わざとなのか、ノイシー先生は似つかわしくないことを言っている。皮肉交じりにこう言ってみた。
「そうリリーダちゃんに伝えておきますね!」
さすがのノイシー先生も笑顔が固まったようだ。
「さて、恋の呪いだけみたいだね?人払いの呪いは効いたかな?」
「絶対的ではありませんが、効いていたようです。リリーダちゃんには効かないけど。」
「ああ、ごめんね~。それわざとやったんだ~。」
「そうですか。」
「驚かないんだね?」
「ノイシー先生がリリーダちゃんに似て優しいのは、知っていますから。」
「間違ってはないけど、呪いをリリーダにすると暴走してしまうんじゃないかとひやひやするからね~。困った娘だよ。」
困っている様子だが、それを嫌とは感じていないようだ。この二人の親子関係が少し羨ましい。
「さて、呪いの時間は終わりだ。」
ノイシー・キャラベルは、隣にある部屋へとアリミナールを誘う。
とある寮のとある人物の現在。
「写真のためとはいえ、一緒に過ごせないなんて!私は、間違った選択をしたのかしら!」
そう、リリーダ・キャラベルは寮で一人、待て状態である。
「ああ~でもこの写真は素晴らしい!」
写真を手に握り、悶絶しながらベッドの上をゴロゴロと転がっている。そんな時だった。
コンコン。
リリーダ・キャラベルの寮に扉のノックの音が響き渡った。




