第百七話 もっと信用してください
アリミナールが教会の中に入るまでもなかった。
ある細長いヒョロヒョロの男性が、飲み物片手にだらりと過ごしているように感じた。あの物腰の柔らかそうな、変人は間違いない。
アリミナールは近づこうとした歩を緩める。そうだ、挨拶しなきゃ。
その時、アリミナールは手を空中に向けて手を掲げた。それと同時に蛇のような炎の渦を操作し、ノイシー先生目掛けて躊躇することなく投げ捨てる。
瞬く間にノイシー先生の元に炎の渦が絡まりだした。その衝撃でノイシー・キャラベルは驚きのあまり、手に持った飲み物を手放しそうになるが、再度キャッチして難を逃れた。
「びっ、びっくりしたぁ~。」
状況を把握したのか、触れても熱くない炎の渦をノイシー先生が触りだす。
「心臓がいくつあっても足らないよ~。アリミナールちゃん、いたずらはほどほどに~。」
笑顔でこちらのほうを向いてノイシー・キャラベルは答えた。その姿を見て、アリミナールも笑顔を返す。
「悪戯は、お嬢様の嗜みです!」
「聞いたことない!」
素晴らしいツッコミを頂いた。
こじんまりとした、貸家にアリミナールとノイシー・キャラベルは足を運んだ。以前、初めて住んだ木造の建物に少し似ているが、一人暮らしのため以前より狭いようだ。
「急にどうしたの~?リリーダが何かやらかした!?」
首を振って違うことを意思表示した。
「リリーダがアリミナールちゃんに何かしたの!?」
首を振って違うことを意思表示した。
「リリーダがアリミナールちゃんの邪魔をした!?」
もっと自分の娘を信用してください。と、心の中で叫んだ。
「あはは~半分冗談だよ~。」
半分本気なのか!と驚きを隠せない。でもアリミナールの私は、表情に出さない。
今度は自分から話し始めた。
「呪いのことです。」
安心したのか、やっぱりそうだろうと思ったのか、温かい目でこちらを見ている。少し恥ずかしいような複雑な気分になった。
「先生!私が好きな人に振られたら、失意の私と結婚してください!」
「ぶーーっ!何言ってるの~!」
ノイシー先生は飲んでいたものを噴き出していた。
「愛人でもいいですよ?」
平然とそんなことを言っているアリミナール。
「あのね、冗談でもそんなこと言っちゃダメ!リリーダがいたら暴走しているよ!」
ノイシー・キャラベルは溜息をつきながら、ガクッと肩を落とした。
「・・・私、どうなるんでしょうか?」




