第百五話 嘘はついてない
寮に戻ってからも攻防戦は続いていた。
「そんなもの何の役に立たないわ!私の嫌がることをするなんて、リリーダちゃんは私のことが嫌いなんだ!」
嘘泣き攻撃を行うが、それでもリリーダは引かない。
「宝物なんです!いくらアリミナール様のお願いでも捨てられません!」
リリーダとは、喧嘩もほとんどないほど仲良くやってきたが、ここまで聞き分けがないとは。
「そんな宝物なんて聞いたことありません!」
「こんなに可愛いんですよ!」
「リリーダちゃんのほうが可愛いから!」
「あ、ありがとうございます!」
ぽっと顔を赤らめてお礼を言われても。こんな底辺な言い争い聞いたことないよ。
「そう言えばアリミナール様!」
「話しを変えようとしてますね。」
「こほん。お父さんに会うのは確か、夏休暇の時ではありませんか?あの人たちに嘘をついて良かったのですか?」
「嘘はついてない。」
「えっと、そうですね。夏休暇なんてあっという間に・・来ますよね。」
「違うの!人払いの呪いは自分で解けるから。」
「え?」
「ノイシー先生が、寂しくなると思うからって解き方を教えてくれてるの。」
「じゃあ、呪い解きましょう!今すぐに!」
リリーダは立ち上がった。
「どうしたの、リリーダちゃん?」
「アリミナール様との時間がたくさんあるのは嬉しいですが、私もお父さんと同じです。こんな呪いダメです!心や人の関わりを動かすのは禁忌です。それに、アリミナール様と一緒にいたいと思う人がかわいそうです。正々堂々と、私はいたいんです。」
ああ、さすが主人公のリリーダ。正々堂々と・・・ね。あなたの言葉が痛い。私はいつだって自分のことばかり考えていた。バッドエンドにならないためにはどうしていくか。攻略対象者たちはどうかわしていくか。ノイシー先生の呪いという言葉にも耳を傾けずに。すべて自分のため。こんな心が綺麗な人だからこそリリーダは主人公なんだろうな。
「そうね。リリーダちゃんの言う通りだね。呪いを解くの、手伝ってくれる?」
「はい!」
私は、ノイシー先生にお願いしてもう一つの呪いをかけてもらった。今になって間違いに気づく。心を入れ替えることは禁忌か、そうだよね。たとえ、自分の心だとしても、こうして制御することがいいなんてことないよね。これじゃあ本当に私は悪役だよ。悪役令嬢だよ。