第百四話 主人公は間違っている
とある教室に残されたのは悪役令嬢と主人公だった。
しかし、ケインが部屋に出る際にリリーダの机の上に封筒を残していった。
「リリーダちゃん、それは何ですか?」
「お手紙ですかね?お部屋に行ってから読んでみます。」
アリミナールはリリーダに対して訝しむような視線を送っていた。
「呪いのこと知っていたのですね。」
「はい。ごめんなさい。」
悲しそうにリリーダは目を伏せた。
「いいの。理由も聞かずに傍にいてくれてありがとう。」
「あ、アリミナール様!」
少しリリーダを喜ばせたようだ。
「で、まだこの場所に私を案内した理由を聞いていなかったわね。」
ぎくりとリリーダがわかりやすい反応をしている。アリミナールは、リリーダが手に持った封筒を握りしめる動作を見逃さなかった。
そのまま、封筒を見せるようにとリリーダの目の前に掌を出して合図した。これもまたわかりやすくリリーダは首を左右に振っている。
「これの中身は、私が怒るような物なのですか?」
リリーダは何も答えない。イエスということなのだろう。
「見てみないことには何も言えません。リリーダちゃんに隠し事をされるのはつらいです。お願いします。見せてくれますか?」
そう言えばリリーダは渋々封筒を渡してくれた。
封筒から中身を取り出すと白い紙が何枚か見えた。何も書いていないので反対側を見る。
「リリーダちゃん!」
「ふぇぇぇ!だってアリミナール様の可愛い姿が!お願いします!これだけは欲しいのです!あいつら卑怯なんですよ?この写真を盾にアリミナール様を呼べって!」
「こんなもんで釣られるほうがおかしいの!ばかばかばか!」
絶叫ものだった。借り物競争の時の妹衣装を再度見る時が来ようとは。
「こんなもの消し炭にしてやります!」
「だめ、ダメダメ~!!!」
動揺している私より先にリリーダが魔法を使用して写真を保護していた。水玉の中に空気を入れて写真を濡れないように制御している。そのため、アリミナールの魔法は効かなかった。
こんなくだらないことに魔法を使用する日が来ようとは。
「こんな黒歴史が残されるなんて聞いてない。」
「素敵な思い出です!」
写真を頬ずりしている主人公の姿が見ていられず、呆れかえっていた。これは主人公の状態異常に違いないわ。乙女ゲームに状態異常とかあったかなと、アリミナールはよろよろと倒れそうな自分をなんとか立ち直らせる。