第百話 王子はマナーを守らない
どこかの教室で5人は食事を囲んでいる。昼食時間も重なっているためか校舎にはほとんど人がおらず、静けさが広がる。
ひと段落したと判断したアリミナールは目の前の食事を食べることとした。周りを見渡すと、なぜかアリミナールの好物が揃っている。食事の内容はケインによる選別と判断した。子供の頃も、なぜかお菓子の趣味を把握されていた気がする。
隣にいるリリーダにもアイコンタクトで食べるよう指示をした。笑顔を向ければ、安心したように食事を開始してくれた。やはりこの場で会話をする気がないようだ。
しばらく経てば、懐かしきブラコンが姿を現した。
「アリー、しばらく会わなかったけど元気そうで良かったよ。今までの兄さんの勇姿をたくさん語りたいけど、長くなるから今日は止めとくね。」
輝かしい笑顔でブラコンを披露しなくてもいいのに。笑顔が眩しいから控えてほしい。しかも、成長したとはいえ幼い頃の可愛さも兼ね備えてイケメンに成長しているなんて反則だと思う。ゲームのおかげでどんな姿になるか理解してはいたが、目の前に存在することのなんと反則技か。
「そうだぞ、ケイン。会えなかった分、アリミナールの話しをぜひ聞きたいな。」
子供の頃の人形のような可愛さは消えていたが、イケメンに変わりはない。完璧超人であり、整った顔立ちはゲーム通りなのだろう。
ああ、そうだ。最近リリーダとの時間が長かったせいもあるが、私は無口が基本形態だった。通りで話し疲れたはずだ。どうぞ察してください、アリミナールの私は何も話しません。
「・・アリミナールがいつも通りで安心しますね。」
同じ無口キャラであるはずのガイは、割とお喋りさんになったのか?グランやケインと違って、the王道王子キャラではないがイケメンに変わりはない。少し中性的な部分もあるため、男女共に人気なのはガイだろう。
「そうだ。子供の頃を思い出して、これなんだけど。」
一国の王子ともあろうものが、食事中のマナーを無視してアリミナールの席までやってきた。そう言ってアリミナールの髪の毛に触れ、髪飾りを外したと思ったら手に持った箱を取り出し、新しい髪飾りを付けられた。
終始、リリーダが厳戒態勢を取ろうとしていたが視線で制止した。もうリリーダの考えが読めません。
髪飾りを付けたガイは、満足そうに席に戻って行った。
どうでもいいけど、付けられた本人には見えないって気づいてます?子供の頃と変わらず困った人だ。