第十話 メイドの気持ち
メイドは言う。
「お嬢様は、まだ6歳です。ですが、このまま王子たちにあのような態度ではお嬢様の身が危険になりかねません。」「私たちのお嬢様はおとなしい方です。あそこまで心を開いてお話になっている姿は珍しい。」「そのまま友人として成長なさるのもよいことではありますが。」「嫁いでしまわれたらと思うと。」「アリミナールお嬢様は私たちの大切なお嬢様なのです。」「悩ましいですわね。」「旦那様の様子はどのようになっているのですか?第五班応答してください。」
「ごほん。アリミナールのことか?」
ブラックレス家の主人は使用人に問われて答える。
「お父様が一番だと言われていてな~。やはりアリーはかわいい。どこにも嫁いでほしくないというのが親心だ。もしも嫁いでしまうなら、当主の代わりも考慮しなくてはいけないな。あのかわいいアリーのことだ、嫁ぎ先は多く存在する。しかし、候補として5人のお方を検討してはいる。いや、一応だぞ。アリーには自分で選択してほしいと思っているが。」
メイドは言う。
「嫌~!お嬢様が嫁いでしまわれるなんて。」「まだ未来の話だろ。なぜ5人もの候補が存在するのか?」「何かの思惑としか考えられません。」「旦那様を否定するような発言はするな。」「みてください!お嬢様が来られました。」
昼食を終えたのであろうか、散歩をしている小さな影がそこに現れる。外は暖かい陽気に包まれているため、屋敷の窓を開けている。少しの風が少女にあたり、長く棚引く髪が揺れ動いている。まだ幼く、小さな少女はゆっくりと歩いている。
「ごきげんよう。皆さんで何かされていたんですか?あれ、もしかしてこの間の早く大きくなるために、子供のようないたずらはもうしないと言ったのが不自然でしたか?」
アリミナールお嬢様は、そこに集まっていた4人のメイドたちに問いかける。
「いいえ、お嬢様。大きくなるお嬢様の姿が嬉しいようで、なんだか寂しい気がして。」
「そう、そうよね。まだ私は子供だからね。・・私のことを考えてくれていたのね。ありがとう。」
メイドは言う。
「お嬢様が着実に大人になっているわ!」「喜べない!でもやっぱりかわいい。」「本当に、かわいい。」「あら、当然よ。私がこの屋敷に働いているのはお嬢様目当てなのですから。」「・・・。」「ほとんどの使用人がお嬢様を愛しむためにいますよね。」「素敵な職場だと思うわ。」