2016~2017年における大ジャンル各階層の変化
ここからがいよいよ今回のデータ分析の本題になります。
毎年『小説家になろう』に投稿される小説の数や読者が付けるポイントにどれだけ変化があるのかということが、私は前々から気になっていました。自分が小説を投稿するときの参考にするという以前に純粋な興味を持っていたわけです。誰もやっていなさそうだったのでこの面倒な作業を自分でやる羽目になってしまったわけですけど、まさか色々あって2年もその機会を待つことになるとは思わなかったです。
そしてようやくここまでたどり着いたわけですけど、やはり従来の手法だけでは見えてこなかったことが見えてきました。それが面白いことかどうかはわかりませんが、私にとっては興味深いことであります。では早速紹介していきましょう。
では最初に、2016年(2016年5月24日~2017年3月1日の約9ヵ月間)と2017年(2017年3月1日~2018年1月1日の約10ヵ月間)に投稿された小説の数を比較してみましょう。
上のグラフがそれぞれの期間中に投稿された小説の数です。大体同じくらいの期間で投稿された小説の数は2017年の方が多いですね。1ヵ月あたりの平均投稿件数で見ても結果は同じなので、『小説家になろう』そのものはまだ成長期にあると言えるでしょう。これは投稿者としても読者としても喜ばしいことだと思います。
『小説家になろう』そのものに勢いがあることはこれでわかったことにして、次はどの分野にどれだけ小説が投稿されているのかを見ていきます。それが次のグラフになります。
上のグラフが、2016年と2017年に各大ジャンルへ投稿された小説の内訳です。てっきりファンタジーが他を圧倒していると思っていたのですが、意外にも文芸と拮抗しているんですね。そして、SFの投稿件数が圧倒的に少ないです。このグラフを見ている限りですと、SFだけが取り残されているようにしか見えません。よく『小説家になろう』はファンタジーが圧倒的に強いと言われますが、投稿件数の面から見ますと「ジャンル改編後はSFだけが弱い」というのがより的確だと言えるでしょう。
各大ジャンルの全体像がわかったところで、今度は0ポイントから10000ポイント以上を11階層に分割して各階層の小説件数の増減を見ていきたいと思います。
上の表は、2017年から2016年の小説件数を差し引いた結果を各階層ごとにまとめています。2017年の方が増えている場合はプラス、減っている場合はマイナスになっています。
こうして眺めていますと、興味深いことがわかってきますよね。全体の列を見ますと、2017年の方が小説件数は増えているものの、唯一2500~4999ポイントの層だけ減っています。そういえば、この階層より上になりますと書籍化した小説がぽつぽつと現れるんでしたよね。ということはもしかしますと、2017年は高ポイントを獲得できる小説とそうでない小説で、緩やかに二極化が始まったのかもしれません。
特にその影響が顕著に表れているのがファンタジーですね。2500~4999ポイントの層で13件減っているのはもちろんのこと、1000~2499ポイントの層で1件、5000~9999ポイントの層で6件しか増えていません。それなのに10000ポイント以上の層では46件も増えています。また、文芸とその他の大ジャンルでも1000ポイントというのがひとつ大きな壁になっているようです。
こうなってくると恋愛の根強さというのが目立ってきますね。確かに2500~4999ポイントの層では大きく落ち込んでいるものの、それでもマイナスになっていないというのは安定感があるという証拠ではないでしょうか。
尚、投稿件数が最も少ないSFは他の大ジャンルよりも更に厳しく、500~999ポイントの層が大きな壁となっているようです。やはり投稿件数に比例してポイントを付けてくれる読者が少ないのかもしれません。ここはもっと盛り上がってほしいですね。
では次に、同じ時期の転生転移の図表を見ていただきたいと思います。
上のグラフがそれぞれの期間中に投稿された小説の数です。転生転移でもやっぱり2017年の方が投稿された小説の数は多いですね。やはりわざわざ別フラグを立てさせることで隔離されるほど人気があるのですから、そう簡単に勢いは衰えないということなのでしょう。
次は、どの分野にどれだけ小説が投稿されているのかを見ていきます。それが次のグラフになります。
上のグラフが、2016年と2017年に各大ジャンルへ投稿された小説の内訳です。こちらはさすがにファンタジーが他を圧倒していますね。ある意味予想通りです。次点で恋愛なんですけどファンタジーとは比べるまでもありません。というより、文芸といい勝負をしていると言えなくもないですよね。SFとその他に関しては、まぁこんなものかもしれません。
各大ジャンルの全体像がわかったところで、今度は0ポイントから10000ポイント以上を11階層に分割して各階層の小説件数の増減を見ていきたいと思います。
上の表は、転生転移の設定フラグが立っている、2017年から2016年の小説件数を差し引いた結果を各階層ごとにまとめています。
基本的な傾向はひとつ前に年間全体の表と大体同じです。全体の列を見ますと、2017年の方が小説件数は増えているものの、唯一2500~4999ポイントの層だけ減っています。
各大ジャンルに目を向けますと、ファンタジーは転生転移でも1000ポイントを境に二極化の傾向が現れてきています。恋愛も2500ポイントを境にファンタジーと同様の傾向が現れてきていますね。そして文芸に至っては、高ポイント層で地盤沈下を起こしています。10000ポイント層では9件も減っていますが、これ引き算の結果異ではなく2017年の小説の件数で見ると0件になっているんですよ。ええ、1件もないんです。ですから本当に廃れてきているのではないかと危惧しております。
各大ジャンルの投稿された小説の数はどこも増えていますが、その内訳を見ますと2016年と2017年で微妙に差異が出てきているようです。特に書籍化が期待できるほどの高ポイントを得るためには、1000ポイントの壁を突破する必要があることもわかってきました。このデータ分析ではその突破する方法については紹介しませんが、そのような壁があるということを知っているだけでも、何らかの対策を打つときに有用なのではないかと思います。