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異世界旅行記 ~異文化交流って大変だね~  作者: えろいむえっさいむ
1章【異世界における異文化交流についての課題と考察、及びその実践】
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4・挨拶失敗

前話のあらすじ「豚に食べられかけた」


※異世界語を表現しようとして使った言語はアラビア語です。ご興味のある方はエキサイト先生の副音声でお楽しみください。

「أدركت؟」


 キャンプに来たんだっけ? と悟は最初に思った。目覚めたとき、まるでキャンプのコテージのような丸太でできた天井が見えたからだ。


 薄いシーツをはいで起き上がろうとして、左肩に走る激痛で倒れこむ。物凄く痛い。ズキズキとした痛みが肩から全身に走る。


「لم تلتئم قد لا تعمل العيوب فقط」


 隣から声が聞こえて思わず振り返ろうとしたが、また肩に痛みが走って目を閉じた。あまりの痛みに涙が出る。こういう大怪我のとき麻酔をしてほしい、と思ったところで、ここは病院ではないことに気付いた。そして、自分がなんでこんな大怪我しているのかも思い出した。


「あ、オレ、食われて、ない?」


 痛みがじわじわ引いてくる。まだジンジンとした痛みは残っているけど、そんなこと気にしていられなかった。あの化け物はどうなったのか、自分は今どこにいるのか、森から助かったのか。


「هادئة النوم، والسماح بالبقاء لفترة من الوقت.」


 ベットの上で仰向けのまま、今度こそ声に向かって振り向いた。そこには妖怪みたいな奴がいた。


 大きな黒いマントで全身を隠しており、しかもフードを目深に被っていた。はっきり言って誰が誰だかわからない。旧知の友人でもここまで全身を隠されては判別がつかないだろう。


 ただ結構小柄なことと、唯一肌をさらしている口元から若い女性であることがわかった。子供かもしれない。


 そして手袋をつけた右手には細長い木の枝を持っていた。おとぎ話の魔法使いが持っていそうな木の枝だ。ロッド、というには野性味あふれるデザインに思えた。魔法使いの杖のようにも見えたが、元気なお子さんがチャンバラで振り回す枝の凄い版、といった方が正確かもしれない。


 何か違和感を感じつつ、悟は無理やり笑顔を作るとその少女、だと思われる変な奴に挨拶した。


「あの、助けていただいた……んですよね? ありがとうございます。助かりました」


 悟はペコリと頭を下げる。ただそれを見て少女は何か不機嫌になった様子だった。


「……قال أن ما؟ قيدوا في الإمارة، أنت؟」


 悟は鼻白んだ。どう聞いても日本語じゃない言葉で推定少女は返事をしてきたのだ。英語にも聞こえなかった。聞いたことのない遠隔地の言葉なのだろうか、と悟はそう当たりをつけたが、困ってしまった。


 言葉が通じないと何も通じない。


 ここがどこなのかとか色々聞きたいことがあったのに、質問することができない。また、相手が何を伝えたいのかもわからない。コミュニケーション不足は争いの元というが、そもそもコミュニケーションができない。


 とりあえずボディランゲージを試してみる。


「私、あなた、ありがとう! 命、助かった!」


 自分と相手を指さし、大きく頭を下げる。次に心臓を指刺したあと、もう一度頭を下げた。


 これで伝わってくれるといいな、と思いつつ無理だろうなと思って推定少女を見たが、案の定相手も困った様子でこちらを見ていた。


「……على نحو ما وجدت المتاعب.」


 ため息をつきつつ少女はおもむろに立ち上がった。そして手に持った推定魔法使いの杖で机の上の水差しを軽く叩き、その後悟が横になっているベッドを杖で二回叩いた。


 ……水でも飲みながらベッドで寝てろ、って意味なのかな?


 悟が理解したのがわかったのだろうか、推定少女は身を翻すとさっさと部屋を出て行ってしまった。


 防犯意識が薄いのかな、と余計な心配をしてしまったが、起き上がることすら大変そうな怪我人なら泥棒なんてできないだろうということなのか。どう考えても信用はされていないだろうけど、害はないと思われているのはわかった。


 左肩を気にしつつゆっくり身を起こす。そして近くの机にあった水差しを持ち上げようとするが、水差しが左手側にあるため、怪我した左肩のせいでうまく取れない。あの推定少女は命の恩人だが、気が利かないタイプなんだろう。なんとか頑張って右手で水差しを持ち上げ、コップが見当たらなかったのでそのまま口をつける。


「……おいしい」


 思わず声が出る。そういえば喉がカラカラだった。バイトが終わったときに飲んだお茶が最後に飲んだ飲み物だから、おそらく半日近くは飲み物を飲んでいない。一気に水差しの水を全部飲んで、少し物足りなかったが、満足して水差しを机に置いた。ゆっくりベッドに横になる。


 自分の現状が何一つわからない状態であり、しかもわからない状態から何も進展していない。相も変わらず状況に流されっぱなしの悟であったが、疲れがあったのかそれとも人の文明がある場所で安心したのか、シーツを被るとそのまま眠ってしまった。

次話「会話をしたい」


初投稿から本日ここまで勢いで書いていきました。誤字、脱字、意味不明な表現等あるでしょうが、今後も頑張っていきたいと思うので、どうかご寛恕のほどをよろしくお願いします。

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