この日記帳の持ち主さんへ
この日記帳の持ち主さんへ
日記を読んでしまいました。ごめんなさい。
でも、どうしてあなたの日記が僕の枕元に置かれていたのでしょう?
明日になるときっと、あなたはこの日記帳を開くでしょう。このまま黙っていれば、あなたは自分の日記が誰かに読まれた事に気付かない筈です。でも、それはフェアじゃないと思うから、僕の日記をここに書かせてもらおうと思います。
僕は真夜中に目覚めた。カーテンの隙間から淡い光が差し込んでいる。きっと月明かりだろう。
僕は窓辺へと行き、カーテンを少し開いた。
湖の周りを取り巻く様に街路灯が輝き、夜空には星達が輝いている。
対岸の街の灯り達も、まるで星達に対抗しているかの様に輝いている。
空も地上も光り輝いているのに、湖だけは漆黒の闇を作りだしている。
僕の記憶の欠落部分を飲み込んでいる魔物のように……。
僕はいつまで起きていられるのだろうか?
僕の記憶の全てが夜だ。何故か昼間に目覚める事はない。誰も居ない夜中の記憶しかないのだ。
僕は独り言以外の会話をしたことが無い。
誰か僕の話を聞いて下さい。
誰か僕に話しかけて下さい。
きっと、今日も夜明けを見ること無く眠りに就いてしまうのだろう。