プロローグ 夏祭り
「お前のことが、俺は好きだ。」
高校二年の夏。
蝉がうるさく鳴く学校の大樹の下で、俺、坂上 虎太郎は同じクラスの浦坂 桃子に告白した。
「え...ほんまに?」
もうだいぶ聞きなれた関西弁で、彼女は聞いてくる。
ここは関東。彼女は一年前に関西の方から引っ越してきた。
「ああ。」
「そー...なんや...」
彼女はうつむく。
...なんだよ、この空気...
「...ええよ。」
「え、本当か!?」
「ん。ちょっとびっくりしたけどな^^」
「っ////」
顔が赤く上目遣いで見てくる彼女。
...やっべぇ、かわいい。
俺は浦坂の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「うわっ!?なんやねんこたろー!!...ああ!顔真っ赤~ww」
「う、うるせーよ!!」
「あははっ!!」
俺は剣道部。浦s...トーコは吹奏楽部。
部活が終わる時間はトーコの方が遅いので、俺は校門前でいつも待つ。
「ごめんこたろー!!」
「おせーよ。何してたんだよ」
「えへへ、明日お祭りで吹かなあかんねん。」
トーコはトランペット(?)っつうのをわっているらしい。
「こたろーも見に来てな!!」
「俺明日試合だし。」
「えー...あ、でも夜ならいけるやろ?」
「ん...まあ...。」
「じゃあ、夜お祭りいこー!!部活おわってから!」
「めんどくさ...」
「なにさあ!!」
「わかったわかった!!で、何時にどこだよ。」
「やったー!!じゃあ、7時にお祭り会場の銀の輪前で!!」
銀の輪とは、お祭り会場...鈴橋公園のシンボルで、よく待ち合わせ場所に使われる。
「わかったわかった...」
今、7時十分前。
銀の輪前についた俺は、トーコを待つ。
「こたろー!!」
「おせーよ...!?」
トーコは、いつもの制服とは違って、浴衣で来る。
「っ//////!?」
「こたろー...顔、赤いよ、どーしたの?」
「いや、何でもねーよ...」
「じゃあ、行こ!!」
それから俺たちは、祭りを楽しんだ。
そのとき、司会者らしき女性が、マイクで叫ぶ。
「みなさーん!!毎年恒例、鈴橋寺の肝試しを開催しまーす!!!」
「二人一組でペアとなり、寺を一周してもらいます!!寺のところどころに落ちているお札を全部集めると、すてきな景品をプレゼント!!」
「今年もやるのかよ...」
「へぇ~、毎年やってるんやぁ...」
そうか、トーコが引っ越してきたのは秋だから、来たことがないのか。
「ああ。でも、お札を全部取れたのは、誰一人いないらしい。」
「へぇ~...よし!!やろ!!」
「はぁ!?」
本気かよ、こいつ...
「やって、負けられないやん!!」
何と勝負してんだよ...
「はぁ...どーせやるなっつっても、聞かねぇんだろ?」
「やたっ!!」
そして俺たちは受付を済まし、並ぶ。
俺たちの番になると、トーコが俺の手をにぎってきた。
「!?なんだよ...」
「...ええやんか、これくらい...」
うつむき小さい声でいうトーコ。
「っ////」
これじゃあ...
___俺がなにも言えねえじゃねぇか!!
なんとなく緊張しながら、トーコと寺の中へ。
「ぅぅ...」
「怖いなら、何でやるんだよ」
「やって...まけるわけには...」
だから、誰と勝負してんだよ...
ゴーー...
「ウヒャアッ!?」
「なんつー声だしてんだよww」
「き、きかんといてよおおおお!!」
「ただの風なりにwww」
「うるさいわっ!!」
そのとき
「オイデ...オイデヨ...」
「何!?」
「!?」
「ホシイ...カラダ...イレモノ...」
いきなり黒い風のようなものが俺たちを取り巻く。
「トーコ!!大丈夫かっ!!」
返事がない。
「トーコおおおおおお!!!」
「...み、君!!大丈夫か!?」
「うっ...」
目を開けると、警察官らしきひとがいる。
「!!トーコは!!」
「トーコ?...ああ、あの女の子か。大丈夫。隣の部屋で寝ているよ。」
隣...?
「ああ、ごめんごめん、意味わからないよね。僕は麻寛。鈴橋市警察所のものだ。で、ここは中央病院。」
ああ、俺たちは病院に運ばれたのか。
「君たち、寺の端の、坊像の前で倒れていたんだ。」
坊像...?
「ああ、坊像っていうのは、昔の怪奇現象の封印のための像らしい。ここらへんで、子供ばかり死ぬ事件がたくさん起こったようでな、当時の人々は、何かの祟りと思ったらしい。」
「...そうなんですか...」
「とにかく今は、彼女が心配だろう。行くか?」
「はい!!」
ガチャ
「トーコ!!」
もう、トーコは目が覚めていた。
「あ、こたろー!!」
「私はダイ丈ブやデ?」