2話目 異世界に降り立った者達
「何だ! 何だよこれ!」
「おい! どう言う事だ!」
「マジかよ! 本当に異世界ってあるんだ!」
「お願い家に返して!」
「やったー! 俺が勇者だ!」
「…………ゴクリ」
殆どの奴がパニックになっている。一人だけアマゾネスみたいな格好の女をガン見している奴がいたが。
しかしあの格好はエロいガン見している理由は分かる。こんな時でもそんな余裕があるのは凄いと思う。もしくはただエロいだけかもしれないが……。
「落ち着け! 落ち着くんだ!」
噴水の淵の上に立った男が大きな声を出している。遠くに居るにも拘らず声はハッキリと聞こえる。
「何が起っているのか分からない人が多いと思うが、落ち着いて聞いてくれ!」
遠目だが分かる彼奴はイケメンだ! 何せ隣りの可愛らしい女の子の手を握っているからな!
「どうやら僕達は異世界に召喚されたらしい! 詳しい話は今から彼女がしてくれる!
皆! どうか冷静に聞いて欲しい!」
イケメンが隣りに居た女の子の顔を見て頷いている。何だかイラっとした。
「っち!」
どうやら同士が居たらしい。音のした方を見てみるとアマゾネスをガン見していた男が居た。
同士が居て嬉しいような、アマゾネスをガン見するような奴と同類で悲しいような複雑な気持ちだ。
「皆様聞いてください! 私は王国三位王位継承者のリリーナ・ルーズベルトです!
ある時私は城の図書室で封印された本を見つけました。その本の中には失われてしまった魔法や秘術が載っていました。
失われた魔法や秘術を確認するために実験していましたが、秘術『英雄召喚』を発動した所皆様が召喚されました。
私が……皆様を此処に召喚してしまったのです。私がもっと聡明であればこんな事態にはなっていなかった筈です。
申し訳ありません! 私は浅はかでした。意味もなく皆様を連れてきてしまい、返す方法が解りません!
必ず元の世界に帰る方法を見つけますので、どうか私をお許し下さい」
涙ながらに話し終わると深々と頭を下げた。
「ふざけんな! 俺を家に返せ!!」
「お願い家に返して頂戴! 子供が居るの!」
「許されると思ってんのか!」
「死ね! 死んで詫びろ!」
多くの罵声が王女に浴びせかけられる。しかし王女は頭を下げたまま動かなかった。
どの位時間がたっただろうか? 30分? 1時間? もっと経っているかもしれない。段々罵声が聞こえなくなってきた。
「皆! 聞いてくれ! 何時までもこうして居ても何も変わらない! 城に休息出来る部屋があるらしいから其処に向かおう! 何か意義のある者は言ってくれ! …………ないようだな。では僕に続いてくれ」
イケメンの後に続いて集団が移動し始めた。何となくあのイケメンに踊らされているような気がして移動したくなかったが、情報が圧倒的に不足していたので仕方なくついていった。
※
イケメンに先導されてたどり着いたのは城の中庭、恐らく訓練場だった。テーブルには大量の料理や飲み物が並んでいた。どうやら行き成り戦闘訓練をさせられる訳ではないようだ。
しかし気がかりな事が一つある。中庭に入る前に兵士が一人一人にステータスを確認するように言って、名前・ジョブ・レベルそしてギルド所属か聞いていた。
薄々感づいては居たがゲームの世界もしくはゲームに似ている世界に来てしまったらしい。
当然ステータスを見ることは出来たしゲームのキャラクターと同じ物だった。
娯楽として浸透しているアニメや漫画等には異世界転移した場合、特殊能力やゲームと同じステータスっといった事が良くある。だからあの広場に居た人間の中には気づいていた者も居ても可笑しくはない。
むしろ『現状を正しく把握するために情報を集めている』っと言っていた兵士の方が正しいと言えるだろう
ただこの流れは上手く行き過ぎているような気がする。あのイケメンが頭の回転が速いか、大人数で異世界転移した場合を事前に考えていたなら納得出来る。
前者ならムカツクが後者なら少し優しくなれそうだ。
「ねぇ、あのイケメンの彼誰だか知ってる?」
「フフフ…………。知りたい?」
「笑ってないで教えてよ!」
「実は私も気になって聞いてみたんだけど、彼女は居ないんだって!」
「本当! 私にもまだチャンスはあるのね!」
近くの女がキャッキャっと騒いでいる。盛り上がっている所悪いが、恐らく望みはないだろう。
骸骨とオークがあのイケメンの好みなら希望はあるが……。
「名前は聞いたの?」
「うん。ミハエルさんだって」
「へ~え。名前からして日本人じゃないのかな?」
「ハーフかもしれないよ?」
「どちらにせよイケメンなのに変わりはないからノープロブレム!」
お前らには問題なくてもあのイケメンには問題ありそうだな。哀れんでイケメンを見ていたがイケメンはメイドや兵士に指示を出していた。
何だろう……違和感がある…………。そうだ! さも当然のようにアイツが指示を出しているが何故この世界の人間でもない者の指示を聞いているのだろうか? それに広場の混乱を素早く対応したのが予め知っていたなら辻褄が合う。 きな臭くなって来たな出来るだけアイツの情報を集めるか。
「お話中失礼。私もお話に混ぜて頂いても宜しいですか?」
「えぇ~。迷惑何ですけど」
「良いじゃない。混ぜてあげましょう」
イケメンの話しを聞き出すために骸骨&オークに出来るだけ紳士に話しかけたが、オークはガチで嫌がっているし骸骨は哀れみの視線で見ている。
何故こんな奴らに蔑まされなければいけない! ふざけんなよ! 俺が言うならまだしもこんな屈辱は始めて受けた!
「有難う御座います。ところであのイケメンさん何ですがプレイヤー名などは聞いていませんか?」
若干顔が引き攣りながらも丁寧に話を聞く。
「いや、聞いてないよ。実名プレイをしてたらしいから」
「実名ですか……。ちなみにギルドには所属しているんでしょうか?」
「な所属だって、聖騎士だからソロでやってたらしいよ」
「聖騎士ならソロでも問題ないですね。レベルはどの位だったんですか?」
「80位だって……もう良い? 連れが余り機嫌が良くないからもう終わりにしたいんだけど」
「済みません後一つだけ、彼メイドや兵士の方に指示を出しているようですが何か気づいた事はありませんか?」
「そう言えば彼だけ様づけされていたわ」
「そうですか、有難う御座いました。済みません会話の邪魔をしてしまって」
「ごめんなさいね。また暇があったらお話しましょう」
オークと骸骨が去っていく。骸骨はなかなか良い性格だったがオークが最悪だ。あのオークは俺が骸骨と話している間俺を睨んでいた。
「きっと彼奴は私に気があったのよ。嫌らしい目で見てたもの」
「そうなのかな? それよりも彼の所に行こう」
オークに俺が気があるだと! ふざけるな! 豚と交尾するくらいなら粘土を叩きつけたようなブサイクとやった方がマシだ!
思わず手に握っていたグラスを投げつけようとしていた。なけなしの自制心で何とか投げずに済んだが、また何か言っていたら今度こそ投げつけてしまうかもしれない早くこの場を立ち去ろう。
立食パーティーっとなっている会場から抜け出すため、出口から出ようとしたら兵士に呼び止められた。
「どうされましたか?」
「いえ、疲れてしまったので少し横になりたいんですが……」
「それでしたら皆ようの部屋をご用意していますので案内しますので、お名前をお伺いしても良いですか?」
「斎藤 賢治です」
兵士の後を着いて行くと城から少し離れた場所にある大きな建物に入っていく。
「斎藤様……斎藤様……2階の25号室ですね」
兵士から案内された部屋には三段ベットが二つ置いてあるだけだった。まさか此処が俺の部屋なのか? 驚いて兵士の顔を見ると申し訳なさそうな顔をした。
「済みません。出来るなら皆さんに個室を用意したかったんですが、人数が余りにも多かったので相部屋になってしまいます。
ただ長くても2~3日なので安心してください」
「……そうですか……」
「何かありましたら近くの兵士に伝えてください」
そう言うと兵士は足早に去っていった。しかしこの部屋で6人と寝泊りするのか、ベットのシーツの下は藁だし枕もない……せめてルームメイトが良い人なら良いな。




