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商人の異世界転移  作者: 佐藤 田中 鈴木
12/20

12話目 奴隷販売代理店2

 暫く座り込んでいたが今日の朝は仲間が集めてくれた情報や連携が上手くいったか聞く予定がある。少し早いかもしれないが店に向かうとしよう。

 門に行くと顔見知りの門番はいなかった。代わりにいたのは若く真面目そうな門番だ。


「外出ですか? でしたらお名前をお伺いします」

「斎藤賢治です」

「確認しました。夜までには帰って来て下さい」

「分かりました」


 門番の兵士に名前を告げ外に出る。真面目そうな門番だったので朝早くから出ることで小言でも言われるかと思ったがそんなことはなかった。

 昨日と同じ道を歩き奴隷販売代理店に移動する。何か途中で珍しい物があるかと露天を覗いたが大した物はなかった。

 アリスちゃんのお土産はアイテムボックスにある食べ物でいいだろう。あれより美味しい物があるとは考えにくい。 

 考え事をしながら歩いているといつの間にか目的地に着いた。


「お早う御座います」

「お早う! お兄ちゃん!」


 オフッ! 可愛いアリスちゃんからお兄ちゃんと言われた! 凄く嬉しい! 思わず抱き締めようとしてしまった。だが何とか我慢して頭を撫でるだけにする。


「今日も元気が良いね。アリスちゃん」

「うん! わたしは今日も元気イッパイなの!」


 可愛い! 可愛すぎる!! 何なのこの子! もう家に持ち帰って育てたい、可愛がりたいそんな欲求が生まれる。しかしここで欲望に負けてしまってはダメだ! 自制することの出来る人間こそ幼女と触れ合うことが出来る。


「そうだね。元気がいいのはいいことだよ。そんなアリスちゃんにご褒美をあげよう」

「何? 何をくれるの?」


 アリスちゃんは嬉しそうに俺の上着を引っ張る。まるで飼い主にじゃれついてくる犬のようだ。


「フフフ、それはね…………ジャーンこれです!」

「わ――――! 美味しそう!」


 アイテムボックスから取り出したのはチョコレートケーキだ。チョコレート味のスポンジにチョコレートの生クリームで作られている。

 シンプルだが子供の大半は甘い物が好きだ。更にチョコレートが好きな子供は多い。この組み合わせであれば外すことはないだろう。


「お腹はイッパイじゃないかな?」

「うん! お腹ペコペコ!」


 アリスちゃんの目はチョコレートケーキに釘付けになっている。恐らくお腹は減っていないはずだ。時間的に考えて朝食を食べてそんなに時間はたっていないだろうから。

 それでも食べたいのだろう。デザートは別腹と言うがこんな小さな女の子でもそうなのだろうか。


「よし、それじゃあ席に着こうか」

「は~い!」


 アリスちゃんはカウンターに戻り座ったので目の前にチョコレートケーキとオレンジジュースを置いた。

 アリスちゃんは食べたそうにこちらを見ている。どうやら食べていいよと言うまで待つようだ。しかし物欲しげにこちらを見ているアリスちゃんは可愛いい。頼まれたら何でも言うことを聞いてしまいそうだ。


「食べても良いよ」


 アリスちゃんは食べても良いよと言った瞬間に食べ始めた。凄い速さだし一口食べると手足をバタバタ動かしていた。

 何だろうこの可愛いい生物は、もしかして俺を萌え殺す目的で誰かが作ったのかもしれないが今ならそれでもいいと思っている。


「美味し~い! 有難うお兄ちゃん! わたしこんなに美味しいの食べたの始めて!」

「…………そう、良かったね」

 危うく魂が抜ける所だった。思わず鼻血が出ていないか確認したが出てはいなかった。もっとも鼻血を出したとしても人間として正常な反応だから問題ない。きっとお巡りさんにも捕まらない筈だ。

 そうこうしている内にアリスちゃんはチョコレートケーキとオレンジジュースを食べ終わたらしい。……こちらを物欲しげな目で見ている。

 本当はあげたい、気の済むまで食べさせてあげたいが、それは出来ない。本当にアリスちゃんのことを思うならあげすぎはよくない。

 太るしお腹が一杯で他の物が食べられなくなるだろう。そうなれば栄養が偏るしお菓子は砂糖が大量に入っているので糖尿病になりやすい。

 せめて一日一個にするべきだ。心を鬼にして断るしかない!


「美味しかった? でもお菓子は一日一個までね。食べ過ぎは良くないから」

「う~~~ん、分かった! 今日は我慢する!」

「えらいえらい! 歯を綺麗に磨いて来たら明日も持ってきてあげるよ」

「分かった!」


 アリスちゃんは元気よく奥に走っていった。きっと歯を磨きにいったのだろう。それにしてもアリスちゃんに嫌われなくてよかった。『お兄ちゃんなんか大っ嫌い!』何て言われたらショックで寝込みそうだ。

 だが上手くいった。明日来ることも伝えたので確実に待っている事だろう。そして物欲しげに俺を見上げるのだ。……素晴らしい! 俺はこの為に異世界に呼ばれたのではなかろうか。天使アリスちゃんを見守る為に。


「おや、いらしてたんですか?」


 声の方を見るとホーキンスさんが立っていた。


「先程来ましてアリスちゃんとお話してました」

「そうですか。アリスは今両親が不在で落ち込んでいます。そうやって会いに来て頂けるとアリスも嬉しいと思います」

「そうですか、それなら良かった。余り頻繁に来て嫌われたらどうしようかと思っていました」

「アリスは人見知りしますが、一度仲良くなると家族のように接してきますのでそれはないかと思います。

 アリスがここ迄早く仲良くなる人は珍しいので貴方は気に入られているようです」

「それは嬉しいですね。私も妹が出来たようで嬉しいです」

「アリスと仲良くして下さいね」


 ホーキンスさんは微笑んでいた。ホーキンスさんには俺達は兄妹のように見えているのだろうか。


「磨いて来たよ!」

「よし、えらいぞ」


 アリスちゃんが歯を磨いてきたことを報告してきたので頭を撫でた。嫌がっていないので本当に家族のように思っているのかもしれない。


「それでは奥で話をしますか? 速い者はもう来ていますが……」

「そうですね。奥で話しを聞きます」


 名残惜しいもののアリスちゃんと別れ奥の部屋に向かった。

 部屋には数名の仲間が居た。まだ時間まで30分程あるにも拘らず集合しているとは……デートには集合場所に1時間は早く行くタイプだろうか?


「お早う、随分と早いな」

「儂は朝が早いからのう。どうせすることもないんじゃから早めに来ただけじゃ」

「俺も早く起きたからクラウドの旦那と来んだ」


 クラウドとカカトは朝が早いのか? 他にもアルセロとギギがいたが会話には乗ってこない。元々な口な2人だから喋るとは思っていなかったが……。


「そうか、報告は全員揃ってから聞くからまだすることはないな。朝飯は食べてきたのか?」

「いや、まだ食べてないんだ」

「儂も食べとらんのう」


 アルセロとギギも首を振っていたので全員食べてはいなのだろう。せっかくだし軽い物を出して皆で食べるか。


「そうか、なら軽い食べ物をだそう。何か希望はあるか?」

「俺は肉が食べたい」

「儂は酒が飲みたいのう」

「魚を……」

「肉や魚は兎も角、酒は大丈夫か?」

「儂はドワーフじゃし、ちょっとやそっとの酒じゃ酔いわせんわ」

「まぁ、出してもいいが飲み過ぎるなよ」

「話しが分かる奴で嬉しいのう」


 クラウドは嬉しそうな顔をしていた。きっと酒が大好きなんだろう。今言われた物と他にも複数の料理と酒をアイテムボックスから取り出す。

 後から人数も来るだろうしどれだけ食べるか分からないので出して置いた方がいいだろう。


「おお、凄い量じゃの!」

「凄げえ! こんなに食って良いのか?」

「ああ、気にせずに食っていいぞ。後から来る奴の分もあるしな」

「ならば頂くとするか」

「魚食う……」


 クラウド達は並べられている料理や酒を食べ始めた。しきりに旨いと言っているが相変わらずアルセロは喋らない。しかし酒を飲みながらツマミを食べているので嫌いではないのだろう。

 クラウドは酒を浴びるように飲んでいるが大丈夫なのだろうか?

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