08_小さな一歩
父さんの畑仕事を手伝うようになって三日目。
「ハツカ!」
リーナの声が庭から聞こえた。
最近は場所の目途がたったのか、探し始める時間帯が前より遅めになった。
朝窓から起こされなくなってうれしい。睡眠は大事だ。
窓を開けると、リーナが笑顔で入ってくる。
遠慮ないな、と思いながらリーナをみる。
リーナはどうしたの?という目で見ている。
「今日も練習する?」
「うん。でも、今日は庭でやりたいんだ」
「庭で?」
リーナが驚いた顔をする。
「父さんの畑仕事を手伝ってて……少し、外にも慣れてきたから」
「本当!? すごいよ、ハツカ!」
リーナが嬉しそうに飛び跳ねる。
「じゃあ、私も庭に行くね!」
リーナが窓から出て庭に降り立った。
僕も、震える足で玄関のドアを開ける。
リーナと母さん以外の人は見えない。
今のところ、ドアを開けるところが最難関だ。
「大丈夫?」
リーナが心配そうに見ている。
「……うん。リーナがいるから」
「えへへ。じゃあ、今日は庭で練習しよう!」
リーナが僕の隣に立つ。
その存在が、不思議と心を落ち着かせてくれる。
「今日は何を練習するの?」
「土魔法で作った石を消す練習をしようかな。リーナは?」
「私は、せっかくだから土魔法からやろうかな」
「いいね」
リーナが手のひらを地面に向ける。
小さな石が、ポロリと落ちる。
形は楕円形?きれいな丸ではない。
僕も手のひらを地面に向ける。魔力を流し込む。
地面から、握りこぶし大の石が浮かび上がる。
表面は滑らかで、完璧な球体。
大きいのを作ると母さんに怒られるかもしれないので握りこぶし程度にする。
「やっぱりすごい! 私の石と全然違う!」
リーナが目を輝かせる。
「別の属性ができたら完璧なんだけどなぁ」
「そうだよね」
リーナが真剣な顔で僕を見た。
「私ね、思うんだ。ハツカの土魔法、本当にすごいよ。みんなに見せたいくらい」
「みんなに……?」
少し想像したら手が震えた。まだきついな。
「うん! だって、こんなに綺麗な石、誰も作れないもん。ハツカの土魔法は特別だよ。それにこの前の柱もすごかった」
リーナの言葉に、少しだけ胸が温かくなった。
「まだ、ちょっときついかな」
「大丈夫。私がずっと一緒にいるから」
リーナが僕の手を握る。びっくりしてリーナを見る。
手が震えてたのばれたかな。
「ハツカが怖い時は、私が隣にいる。だから、少しずつ慣れていこう?」
「……うん」
手を離して、会話しながら練習を続ける。
最近土属性について、できることが増えてきている。
最初は作った石を消すことを考えていた。
半月くらいやってみて成功することはなかったので考え方を改めてみた。
消すまでの過程を考えた方が良いのではないか。
そもそも、消すという部分が違うのだろう。
石を土に変えて、変えた土を粉くらい細かく、もっと細かくしてばら撒いたらそれは消えたといえるのかな。
消えたというより撒いたかな。
これを早く順番に処理したらどう見えるんだろう。はじけた様に見えるのかな。
どんどん楽しくなる。考えることは好きだ。
僕は石を見ながら考え込む。
リーナは僕を見て邪魔しないように石を生成している。
作った石を土に変えようと手を向ける。
だけどできない。難しいな。土のイメージが足りないのかな。
そもそも魔法って気づいたらできてた気がするけど、どういう仕組みなんだろう。
昔隣に住んでたトムさんが石をよく作るから石のイメージがついていたのかな。
そういえば、トムさんが作ってた小さな鳥の彫刻可愛かったな。
考えがそれ始めたところでリーナが声をかけてくる。
「ハツカ!石貸して!見てて!」
リーナが作った石に対して手を向ける。
何をするんだろう。
「いくよ!」
石を見る。まさか土に変えるのか?まさかね。
石を見ていると、ぱかんと割れた。それもきれいに真っ二つに。
「「は?」」
洗濯が終わり、椅子に座って休憩していた母さんもびっくりして声を出した。
何が起きたんだ?これたぶん風魔法だよね?風って石切れるの?見たことない。というより怖くないこれ。
リーナはすごいだろといわんばかりにこちらを嬉しそうに見ている。
「これって風魔法?」
「うん。すごいでしょう」
「そんなことできるの?」
「できたよ!」
「もう一回いい?」
「うん。いくよ」
リーナは手を半分になった石に向ける。
ぱかんと割れた。半分になった石の片方がさらに半分に。
母さんをみると、唖然としている。
風魔法が得意な母さんでもできなさそうだ。
リーナを見ると褒めてほしそうだ。
「えっと。すごいね。びっくりした」
「でしょ!家だと危ないから見せれなかったけど庭なら思う存分できるから」
「なるほど」
リーナと喧嘩なんてしたことないけど、怒らせることはやめておこう。
しっかりリーナの言うことは聞こう。じゃないと切られちゃう。
リーナは座っている母さんを見ると
「リナさん。作った石は私が粉々にするから掃除は心配しないでね」
「……そうね、ありがとう。でも危ないから無理はしないでね」
「はーい!!」
母さんは苦笑しながら返事を返し、リーナは嬉しそうにしている。
僕が大きいものを作った時どうするかで悩んでたからリーナなりに作った魔法なのかな。
だとしたら嬉しいけど、すごく攻撃的だな。




