03_こわい
それから三日後。
リーナは毎日通ってきて、魔法の基礎を一緒に練習してくれた。
「ハツカは土魔法がすごく上手なんだから、他の魔法もきっと使えるようになるよ!」
と言われても、僕以外の人が土魔法を使っているところをあまり見たことがない。
そもそも土魔法を使うタイミングは限られている。
少なくとも家事で使うことはないだろう。いや、知らないだけであるのか?
そんなことを考えていると、リーナは僕の向かいに座った。
「まずは火魔法から試してみよう。手のひらに意識を集中して、温かいイメージ」
言われた通りにする。手のひらに魔力を集める。火のイメージ。
何も起きない。
「...ダメだ」
「じゃあ、風は? 軽くて、流れるような感じ」
風をイメージする。でも、髪の毛一本動かない。
「水は? 冷たくて、形を変える感じ」
水をイメージする。でも、水は出ない。もちろん、手のひらは乾いたまま。
「...やっぱり、できない」
僕は項垂れた。
リーナが僕の肩を叩く。
「大丈夫! じゃあ、得意な土魔法を見せてよ。
家にばっかいるから私、ハツカの土魔法ちゃんと見たことないし」
「でも...土魔法なんて...」
「いいから! 見せて!」
リーナに押され、僕は手のひらを壁に向けた。
深呼吸。魔力を流し込む。土のイメージ。
徐々に丸い石が生成される。
「すごい!すごい!
私でもこんなに大きな石作れない!」
「それって、得意な属性じゃないからじゃ。。」
「周りの大人だって、ここまで大きなの作ってるとこみたことないよ」
「いや、だから、それは仕事とか家事とか生活向けの属性ではないからだって」
ゴンッ
と生成した石が床に落ちる音が響く。
「とにかくすごいの!!」
なぜか、怒られた。
そう思いながら、床にある球体の石を眺める。
大体、握りこぶしくらいか。
「まだ大きいの作れたりするの?」
「多分作れると思う。
家だと大きいの作れないからやったことはないかな。
このくらいの大きさのものを作る練習をいつもしてるくらいかな。」
「そうなの?なら作ってみようよ!」
「えっ・・いや・・たぶん、家から外に出せなくなるよ」
いやな予感がする。
「そんなに大きいの作れるの?なおさら試してみるべきだよ。あと普通にどこまでできるのか見てみたい。
外でなら試せるでしょ?試してみようよ!!」
そうなるよね。ムリムリムリ。
「外は無理だよ。危ないよ。。」
「そんなことないよ!庭でならできるでしょ!!ハツカママに聞いてくる」
そういうと、母さんのいるとこに走り出した。
どどどどうしよう。どうにかして、断らなきゃ。。
床にある石を見ながら、頭の中で回避する方法を考える。
このまま部屋に鍵をかけるか?いや、ここまで練習に付き合ってもらってるのに、それはなんか違うしやりたくない。
じゃあ、どうする?リーナのことだ、無理やりでも外に連れ出す気だ。家に入れるんじゃなかった。
そんなことを考えていると、呼吸をすることすら忘れ、どんどん手が震えているのを感じた。
目の前がぐるぐるする。もう鍵かけて閉じこもろう。その方が楽だ。想像することや思考をやめたからか、徐々に震えがなくなっていく。
それでも苦しい。
部屋に鍵をかけるために、目線を石からはなし顔を上げると、横にリーナがいた。
なぜか少し泣いている。母さんが断ったのかな?ありがとう母さん。
そんなことを思いながら黙っていると
「ごめんなさい」
リーナから急に謝られびっくりした。
同時にごめんなさいの内容を理解し、リーナの顔から目線をずらした。
「ハツカが外が怖いことも分かっているのに
庭なら大丈夫と思ったの
一緒に練習してるときはまえと変わらないハツカだったから」
この様子だと、手が震えてたところも見られたみたいだ。たぶん顔色も悪くなっていただろう。
「ごめん。大丈夫だよ。
村の中なら安全なのはわかってる。
でも怖いんだ。魔物も怖いけど、人の目も怖いんだ。」
「えっ?」
初めて知ったという声がした。怖くて顔を見れなかった。
それもそうだ。人の目が怖いことは誰にも言ってない。
父さんと母さんは多分察しているだろう。
「一属性の魔法しか使えない。しかも土属性しか使えないから
生活や仕事にはあまり役に立たないし
最初は大丈夫だったんだけど、時々聞こえるんだ
『クレイ家の坊や、土しか使えないらしいぞ』
『 四属性使えないなんて』って」
「そんなことない!」
「分かってはいるんだ。もう少し待ってくれよ。」
「わかった。明日も来るね」
悲しそうな声でそういって、リーナは部屋を出ていった。
なさけないな。そう思ういながら。
床にある石に目を向けた。
どうしよう。。
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翌日、リーナは家に来なかった。
外に出ればくなって初めてのことだ。
「リーナちゃん今日は来ないのね」
そう母さんがいうと
「どうだろう。」
と僕は返した。
言葉に表せない感情を抱いた。
安心ではないし、悲しいわけではない。嬉しくはないな。
「リーナちゃんと何かあったの?」
「昨日、母さんのところに来なかったの?」
「来てはないわね。ただ家から出ていくとこは見たわ。」
どうもすれ違いというか、外出から帰ってくるタイミングだったらしい。
「リーナに土魔法を見せてほしいって言われたんだ。」
「うん」
「それで、みせたけど、まだ大きくできるか聞かれて、多分できるって返したんだ」
「うん」
「それでね、また見せてって言われて」
「うん」
「でも大きなのを作ったら家の外に出せなくなるから無理って断ったんだ」
「・・・うん?」
「えっ」
「そんなに大きな物を作れるの?」
「えっ、多分作れるよ。みんなできるでしょ」
「そーね・・・」
母さんは明らかに戸惑っているようにみえる。
ただそれは今はどうでもいい。
「それで、庭でならできるでしょって言われて。
ちょっといろいろあったんだ」
母さんならわかってくれるだろうと濁した。
「そういうことね。ハツカはどうしたいの?」
「わかんない。でも庭に出ることはできると思う。
怖いけど。」
「無理はしなくていいわ。それよりもリーナちゃんとは仲直りしたいの?」
「したい」
「なら考えなさい。どうすればいいか。
少なくてもリーナちゃんはどうしたいか考えて毎日家に来ていたと思うよ。」
そうだろうか。
いや、そうなんだろう。
そんなことを母さんと話していると
「ハツカ~!今日もちゃんと来たよ!夜更かししちゃった!」
リーナの大きな声がする。
安心したのか、少し目がうるっとしながら、こたえる。いつもどおりに。
「おそいよ!今日は何の練習する?」
母さんはニヤニヤしながらこちらをも見ている。
余計なこと言わないでねと母さんを睨む。
分かったといわんばかりにこちらを見ながら
「リーナちゃん、いつもありがとね。」
「今日もお願いね。」
「はーい。」
といつものやり取りをみてホッとする。
このままじゃだめだなとずっと思っていることを考えながら練習の部屋に向かう。
「昨日はごめんね。今日は何からやろっか?」
「こっちもごめん。いつも通り火から練習したいな」
「うんうん。じゃ火からだね!」
そういって練習を開始する。




