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土魔法しか使えない僕が、●●の●●になるまで(タイトル未定)  作者: ハッカ飴


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10/11

09_壊れた窯

リーナと庭で練習を始めて1ヶ月が経った。

季節はもうすっかり夏になった。夏野菜が食べ時である。


最初の頃は父さん、母さんが村の人たちに伝えたのか僕が庭で見かけても声はかけてこなかったが、最近は声をかけてくるようになった。

初めて声をかけられたときは父さんの後ろに隠れたのを覚えている。父さんは声をかけてくれたおじさんに挨拶を返し、ごめんねと謝っていた。

今思えば父さんがお願いして僕に声をかけてもらったのだろう。あれは怖かった。いや本当に。

今では挨拶や簡単な会話もできる。村の中なら父さん、母さん、リーナが一緒であれば回れるようになってきた。


今日の朝ごはんは硬いパン、スープにはきゅうり、トマト、ピーマン、玉ねぎ、ベーコンといった具材が入っている。

スープはトマトがベースになって塩・胡椒で味が整えられている。硬いパンを浸して食べると柔らかくなりすごくおいしい。

僕はこの朝ごはんがかなり好きで母さんはよく出してくる。父さんは野菜があまり好きでないのかスープは具材少なめで食べている。

こんなにおいしいのにな。


朝ごはんを食べていると


「ハツカ! 大変なの!」


いつもより早い時間に、リーナが駆け込んできた。

庭で練習する様になってから一階から入ってくるようになった。

普通なんだけどね。


「どうしたの?」


「パン屋のおじさんの窯が壊れちゃったんだって!」


「窯が?」


「うん。石の窯なんだけど、ひび割れて使えないらしいの。おじさん、すごく困ってた」


リーナが息を切らしながら説明する。


「それで……?」


「ハツカなら直せるんじゃないかなって思って!」


「えっ……」


僕は戸惑った。


パン屋のおじさん。村で火魔法が得意な人という印象がある。

そしておじさんが作ったパンはとてもおいしい。

今食べている硬パンもおじさんが作っている。


そもそも、自分で治せるのでは?

土魔法が苦手とか?


「無理だよ。僕なんかが……おじさんの土魔法で治せないの?」


「おじさんは土魔法が苦手で治すのに時間がかかるみたい。

 大丈夫! ハツカの土魔法なら絶対できるよ!」


父さんなら治せるでしょ。そう思い父さんに目をむける。

目が合った父さんは苦笑しながら


「土魔法はこの村ではみんな同じくらいだ。

 そもそも土魔法は使う場面が少ない。だから大体の人は土魔法を練習せず別の属性を鍛える人がほとんどだ。

 トムがいたときは依頼して治すことが多かったが今では時間をかけて自分で治すことが多いんだ」


 初めて知った。

 だからリーナは僕にお願いしに来たのか。

 それは困った。困った顔で父さんと母さんを交互に見る。


「そうね。うちのご飯も一週間は持たないと思うからできれば見て来てほしいわ」


母さんもリーナ側だ。観念するしかない。

リーナが僕の手を引っ張る。


「それに、私も一緒に行くから!」


「でも……物を治したことがないよ。もっと壊れても知らないよ」


「ハツカ、お願い! おじさん、本当に困ってるの。明日からパンが焼けないって。私もパンが食べられないのは嫌だよ」


ハーヴェイ家では明日分のパンもないみたいだ。

パン屋に行ったらパンが無かったんだろうな。


「……わかった。やってみるよ」


「本当!? ありがとう、ハツカ!」


僕が観念すると、リーナは嬉しそうに僕の手を引っ張り始めた。

引っ張られるまま、パン屋へと向かう。

ハーヴェイ家とクレイ家のご飯のために。


---------


パン屋の前に着くと、おじさんが窯の前で修理をしていた。


「おじさん! ハツカが来てくれたよ!」


リーナが元気よく声をかける。


「リーナちゃん……それに、ハツカくんも。久しぶりだね」


おじさんが優しく笑う。外に出る様になっても人がいるところは避けていたので約2~3年ぶりになる。


「フランツさん、ひさしぶりです。あの、窯が壊れたって……」


少し声をうまく出せない状態で挨拶をする。

震えてはいないといいな。


「ああ、見てくれるのかい?

 昨日大きなひび割れができてしまってね」


おじさんが窯を指差す。

石造りの大きな窯。側面に、確かに大きなひび割れがある。それにかなり深い。


「これじゃあ、パンが焼けないんだ。買い替えるにも次の商人が来るまで時間がかかるから困っていたところだよ。

 土魔法で治そうとして試したが難しそうだ」


「僕で……直せるかな」


「リーナちゃんが、ハツカくんの土魔法はすごいって言っててね。もし良かったら、見てもらえないかと思って。

 どうせ買いなおすしかなさそうだから壊れてもかまわないよ」


おじさんの優しい目。怖い。期待の目が怖い。

でも、リーナが隣にいる。


「……やってみます」


声は落ち着いて話せるようになってきた。

僕は震える手を、窯のひび割れに当てて確認した。


「フランツさん、窯の治し方ってどういう風にするかわかります?」


「詳しくはないが、粘着のある土を使うらしい。ただこの規模のひび割れはどうするかわからない。

 俺の土魔法だとその土がそもそも作れないんだ」


なるほど。

最近は石を土に変えるためにいろいろ土を触ってみている。

畑の土や庭の土、父さんに頼んで森の外の土もいろいろ見てきた。

リーナもたまに珍しい土をもってきてくれる。

記憶に残っているのは、川の灰色の土。匂いが特にきつかった。

あの時はリーナも頑張って持ってきたみたいだった。

確か粘着質ではあったような気がする。


「フランツさん、いろいろ試してみたいのでいくつか入れ物をもらってもいいですか?」


「わかった。いくつか持ってくるよ。

 いろいろありがとう」


5個ほど陶器の器を持ってきてもらった。


「あの、土魔法で土を作ろうと思うんですけど……」


「自由に使ってもらってかまわないよ。もう古くて捨てようと思ってたやつだから」


「じゃあ使います」


土を入れたあとの器でご飯は食べたくないもんな。

灰色の土を作り器に入れていく。


「リーナ、水魔法でこの器に水を入れてもらってもいい?」


「うん!」


フランツさんは一瞬不思議に思ったのかこちらを見るがすぐに視線を戻した。

土属性しか使えないことを思い出したのだろう。申し訳なさそうな顔をしている。

僕も気まずい。


「はい!」


「ありがとう」


受け取った水を少しずつ灰色の土に混ぜていく。

それを見てリーナは持ってきたときの匂いを思い出したのか顔を離す。


「大丈夫だよ。新しく作った土だから川から持ってきたときの匂いはないよ。

 あれは、川の影響なんだと思う」


「そうなんだ」


リーナが顔の位置を戻し眺めている。


土に水を混ぜ様子を見ていると、水の入れ過ぎかわからないが粘着力が初めて見たときよりもない。

水を入れ過ぎたのかなと思い土を足す。

フランツさんも変わったものを見る様に作業を見ている。

なんだか緊張するな。


「こんな感じでちょっと試してみようと思うんだけど、火の魔法をリーナお願いしてもいい?」


「もちろん! 土属性以外は私の出番だもんね」


「うん、お願いね」


リーナはすごく嬉しそうだ。


似たようなヒビ割れをした石板を用意する。

その割れた部分に粘着のある灰色の土を埋めていく。奥の届きにくい部分は土魔法で操作し奥に詰めていく。

濡れた土でも操作はできるみたいだ。

火魔法で水を乾燥させもう一度薄く塗り乾かす。乾燥後ボロボロと崩れ落ちる。

水の量を調整して再度試すが、結果は同じだった。


「あー、やっぱりダメだ。この土じゃダメなのかな」


リーナが不思議そうに首を傾げる。


「ねえ、この灰色の土じゃないとダメなの?」


「え?」


「だって、土って色々あるよね。ハツカ、いつもいろんな土を触ってるじゃない」


そうか。灰色の土がダメなら、違う種類の土を試せばいい。


今まで触ってきた土を思い出す。

畑の土、庭の土、森の外の土。

リーナが持ってきてくれた川の土。

粘着質のある土……粘着質のある土。


どれも灰色の土ほど粘り気があった記憶はない。

というより、灰色の土が一番粘り気があったはずなのに。

じゃあ、もっと粘り気のある土ってあるのかな。


困った顔でフランツさんを見る。


フランツさんが口を開いた。


「そういえば、昔トムさんが竈を直してくれた時、赤茶色の土を使っていた気がするな」


赤茶色の土。

確かに、畑にもそういう土があった。

あれは触ったことがあるけど、粘り気はどうだったかな。

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