序
冬休みが終わり、三人のお店も大成功。
地域住民から祭りごとには必ず営業してほしいというように熱望されてしまった。
そして、学校が冬の長期休みも終わり、心配されていた二学期のテストも良い成績で終わらせることができた。
しかし、こむぎ、玉穂、伊久実。三人の日常は変わりはない。
今日も各自お店を任され、こむぎに至ってはプラスアルファで習い事がある。
この習い事をしながらの経営に関していつまで続くのか分からない。
もしかしたら、小学生限りでこの生活の一部を終わらせることになる可能性もある。
こむぎはどのような結果となっても小学生の期間を最後まで良いものにしようと毎日、生活している。
「こむぎちゃん、もうすぐ卒業式ね」
むぎまめ麵生家のベテランパートさんがこむぎの卒業について言った。
「はい」
「初めて会ったときは生まれて間もなかったのに、子会社ができた途端にこむぎちゃんも働くことになってどうなるかと思ったけど……」
仕事中だが、数日後に控えている卒業を前にパートさんはこむぎに時の流れを感じていた。
「あ~~。泣かないでください。卒業しても私はまだここで働きますから」
「まあ、そうよね。社長も一応景気の良い、むぎまめ麵生家を手放す訳ないものね」
「あはははは……」
最初は父親から任されたお店経営も今になっては自分の絶対的な運命、居場所となっている。なので、何を失ってもこのお店だけは守り抜かなければならないという使命がある。
しかし、進学後の生活によってはお店に出る時間を変えなければならない。それは進学後の進路の為でもある。
だが、今はただ漠然としか考えられていない中学像は時と共に変化していく。こむぎは卒業を間近に迫ったこの時期に思う。
卒業・卒業式当日。
こむぎは今日で最後であろう小学校の制服に着替え、登校準備をする。
父は今日も仕事で来られず、母は後から来ると昨晩言われた。朝は昨晩の中に作っておいたご飯を食べる。朝食の用意はむぎまめ麵生家上の自宅に住み込みで働いているお手伝いさんにお願いしている。
「それでは行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
こむぎは普段と変わらず、通学に使っている馴染みの道を通っていく。
ここも今日が最後かと思うと寂しく思う。道の一部分は通学外でも使う。しかし、小学校へ向かう訳ではない。それは学校から近づくにつれて、この道は今日が最後という思いで通学路の景色が変わっていく。
「むぎちゃ~~ん!!」
「むぎ~~、おはよ~~う」
麦荳こむぎの同級生、白月玉穂と飯森伊久実が後ろからやって来た。三人で小学校へ向かう通学路を歩くのも今日で最後。
しかし、進学後も三人は一緒に学校へ登校すると三人とも信じていた。
「もうすぐ卒業かって何回も言い続けていたけど、ついに今日がその日になってしまったんだね~~」
伊久実はしみじみと思っていた。
「始まりがあれば終わりがあるだね」
こむぎは言った。
「二人とも泣かないでよ」
玉穂は言った。
「一番泣きそうなのは、玉穂だけどね」
「それ分かる~~」
「は?それを言うなら、しみじみ思っていた伊久実が今、一番泣きそうよ」
三人は相変わらず、仲良く学校へ登校した。
最後のホームルームとなり、こむぎ達生徒の目の前には担任が登壇していた。今日は普段の格好とは大きく違い、着物に袴と日本の卒業式らしい伝統衣装を身にまとっていた。
「皆さん、ご卒業おめでとうございます。式はこれからなので、皆さんはまだ泣かないでくださいよ。私も頑張って持ちこたえますから……」
式典が始まるにつれて、生徒たちは練習してきた卒業証書授与式の手順などを間違えまいと少々緊張感が漂っていた。
卒業証書授与式が始まった。一人ずつ証書が渡されていく。
「白月玉穂」「飯森伊久実」
こむぎの友人達も無事、卒業証書を受け取った。
いよいよ、こむぎの名前が呼ばれる。既に列に並んでいるこむぎの手には手汗が染み出ていた。
そして、進行役が息を吸った。
「麦荳こむぎ」
式典・終業式が終わり、こむぎは進学先が違う同級生と会話をしていた。
「みんな、私が恋しくなったら、むぎまめ麵生家に来てね」
「それ宣伝でしょ~~。でも、会いたくなったら、食べに来るわ」
「こむぎちゃんがいないだなんて、寂しいよ~~」
「こむぎさん、何かと助けてくれてありがとうね」
「働きすぎでどこか故障するなよ」
「ありがとう……皆」
こむぎは寂しく思いながらも笑顔で小学生時代の友人に一時の別れを告げた。
登校時に話していた誰が一番泣くかと話していたが、結局一番泣いていたのは玉穂だった。
そして、三人達の卒業式はまだ終わらなかった。




