弐
「こむぎちゃん……」
「あ、刑事さん……」
そこには先日、甘味処・玉月にいたイケメンの刑事さんがカウンター席に座っていた。
どうしてこの場所にいるのか。なぜ私のお店にいるのか。こむぎはそのようなことを考えられない衝撃があった。
「今日は……、どんな用件で……?」
こむぎは刑事さんに聞いた。
「今日は夕飯だよ。実は度々このお店には来ていてね。後々、玉穂ちゃんと伊久実ちゃんからこのお店がこむぎちゃんのお店だって聞いたから、もしかしたら会えるかもっていう少々の期待かな……」
こむぎはもしかしてストーカーされているのかと怖く感じた。
「あ~~、でも、ストーカーってことではないということは言っておきたいな。ちゃんと、勤務中には仕事しているし、毎日こむぎちゃんのお店には来ないから……、ね」
「まっまぁ……」
(刑事さんだしそんな未成年への犯罪なんかするわけないよね……たぶん……)
こむぎは自分の中で少々疑問には残るが、今のところは丁度良い距離感を保とうと考えた。
「ところで……、注文しましたか?」
「あっ、いいえ……。ちょっと考えていて」
「それなら、今の時期はあさりうどんがお勧めですよ」
「それじゃあ、それで……。あと、天ぷらの盛り合わせもお願いします」
「はい、今から準備しますね」
こむぎは帰宅後の格好で一旦、更衣室へ行き仕事服へ着替えた。
そして、予め用意しておいた生地を麺をカットする機械にかける。麺を茹で上げた器に入れ、あさり、ネギ、だしをかけた。
一方、天ぷらには定番の海老、かぼちゃ、なす、きす。そして、季節の野菜としてふきのとう、タラの芽、青じそを添えた。
お盆に詰め合わせたあさりうどんと春の天ぷらセットを持って刑事さんのもとへ運ぶ。
刑事さんは書類を読みながら待っていた。
「お待ち同様です」
「ありがとう、こむぎちゃん」
既に九時過ぎの現在。刑事さんは頬張るように食べていた。
「刑事さんって、いつもこの時間にお仕事終わるんですか?」
「あーー。今日は色々と仕事が立て込んでいて遅くなっちゃったんだ。普段は一、二時間くらいは早く上がれるんだけどね」
こむぎは刑事さんの事情を察した。
「息抜き程度になるのであれば、また……来てください。あっ!でも、たまちゃんと伊久ちゃんとも仲がいいのであれば、二人のところにも行ってあげてくださいね」
「はい」
刑事さんは微笑みながら言った。
刑事さんは続けて話した。
「あと、この前の気絶の件で……」
「ふん?何のことですか?」
「気絶の……」
「ふん?」
(駄目だ。なんか、開いてはいけない扉を空きそうだ……)
刑事さんは原因となったことを省略し、結論に至った。
「今度、テスト勉強を助けたいな~~と思って……。ほら、苦手な教科とかない?」
「テストですか……。あ!理系かな……。といっても、算数とかはこの職業柄もあり得意ですが、理科とか、科学が苦手……です」
「それなら、僕の専門だから教えられるけど、どうかな?」
こむぎは少々悩んだ。しかし、その答えは明確だった。
「それなら……、よろしくお願いします」
(テストの点数が悲惨だったら、お父さん達に怒られちゃうし……)
ここからこむぎの点数稼ぎの道が始まる。




