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しらたま物語  作者: 忽那 和音
-飯森伊久実の章- 夏の章
31/51

 臨海学校の数週間前。

 伊久実、玉穂、こむぎは夏休みに行われる銀月神宮の夏祭りに関する会議あると聞き、外宮の事務所へ向かっていた。

 伊久実は二人の真ん中で歩いている。彼女は両手を後ろに向けながら歩いている。

「急に呼び出されたけど、なんだろうね」

 玉穂は事細かなところまでは関心が無いような気持ちを持って言った。

「さあ、お祭りが近いから実行員会の皆さんも切羽詰まっているのでは?」

 こむぎは少し楽しそうに自分なりの妄想の一部を離した。

「または~~、私たちが小学生として最後の夏休みだから、町の皆で私達を崇め奉ってくれるのでは~~?」

 玉穂は言った。

「それは、それでいつもの生活ができなくなりそうだから、嫌ね。でも、いいじゃない。最終日の夜には皆で美味しいものを一杯食べられるのだから」

「まあ、そりゃあそうだね」

 伊久実は日々、働きづめの体を少しは休ませたいと思いながらも、常連客や新規のお客さんを獲得するためにも頑張ろうと思った。

 外宮近くまで歩いて来た伊久実達。目の前にある多くの参拝客が利用する北口には伊久実達の顔見知りである同業者数人が三人の姿に気づいたのか、慌てている様子だった。


「ねえ、二人とも」

 突然、伊久実が話し始めた。それは、二人にとっては何かとんでもないことを考えているときか、とてもどうでもいいことを考えているときの他に無い。

 玉穂は言った。

「また、変なことでも思いついたの?」

「いや、もしかして、私達ってヒーローなんじゃないかって思ったの」

「ひーろー?」

 こむぎは伊久実の自分達が特撮の主人公的ポジションにいるという発言に理解できなかった。

「ほら、境内にいるあの人達。もしかして、こう言ってんじゃない?」


 遠目から、伊久実は勝手にアフレコし始めた。

「みっ、見ろ! おやっさん」

「あ~~、あれはおらたちの~~救世主だ~~」

「なんやねん、あれは私達のお店を潰しに来たんだよ」

 続いて、後からやって来た宮司が北口にいた同業者達と合流した。

「あ~~、宮司さ~~ん」

「あっ、あの方達は我らが崇める神様の力を受け継がれた英雄だ!」

「「「なんですとー!」」」


 伊久実の一人アフレコが熱を籠ったものとなってきたところで、後ろから強烈なチョップを受けた。

「あぁー! いってー!」

 伊久実は痛そうに一旦、しゃがみ頭を両手で擦った。

「こら! 大人をからかっちゃいけないでしょ。それにこれ以上大きな声でそんなことを言われたら、ただでさえ、激しい稲荷餅の飲食店競争がさらに酷いものになってしまうわ」

 玉穂はチョップをした後に、伊久実へ同級生、友人。そして、同業者として少しお説教をした。

「それにしても痛いー!」

「よしよし。でも、発言には気を付けてね」

 こむぎは優しく伊久美の頭を撫でたものの、発言については気を付けるように注意を受けた。

 一人で白熱していた伊久実の熱はいつものものに戻り、再び外宮へ向けて歩き出した。


 数分後。

 遠目で見えていた鳥居が目の前に柱として見えるほどとなるくらい近くまでやって来た。

「あ~~、三人とも。忙しいのに申し訳ないね」

 先に境内で作業する商工会議所の男性に話しかけられた。

「いえ、こちらこそ。遅れてしまって申し訳ございません」

 玉穂は丁寧に謝罪の弁を述べ、一礼した。

「いや、それはそうと、さっき伊久ちゃん痛そうにしていたけど……」

「あれは、伊久実の起こした災厄なので、自業自得です。なので、何も問題はないです。ね、伊久実」

「はい、そうです」

 伊久実は立ったままの一礼ではなく、土下座をしてまで謝罪をした。それは先に待っていた関係者への謝罪と神様の近くまで来たのに関わらず人を侮辱するようなことを遊び半分でも言ってしまったという懺悔の念からのものだった。


 そして、会議室で行われた話というのは宛名不明の封筒だった。そこには稲荷餅の総買収計画という目を疑うような内容のものだった。

 相手の会社は超有名企業の極秘計画だった。玉穂とこむぎは終始聞き漏らさずに話を聞いていたが、難しい話を長々と聞くのが苦手な伊久実にとっては途中の記憶は後々に無くなっていた。


 会議の内容をほとんど頭に入っていなかった伊久実は自分なりに計画のことについて考える毎日。そこで、物理的に買収を阻止しようと、学校の友人達と共に稲荷餅のパトロールをすると決めた。


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