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しらたま物語  作者: 忽那 和音
-白月玉穂の章- 夏の章
12/51

拾陸

 暦は小暑を迎え、稲荷餅のお店には竹が立てかけられている。

 しかし、本日限りの光景というわけではない。旧暦の8月7日も七夕としてして行事を行う地域のため、竹や笹の葉が茶色に変わる一か月後まで飾られる。

 稲荷餅の中で一番大きな七夕飾りや多くの竹が立てかけられているのが、地域住民や県内外で有名な神社である銀月神宮。

 主に願い事は神社に置かれている竹に結ぶのが通例となっているが、各お店も町の活気維持や商売繁盛の願いを込めて、七夕に参加している。


 その甲斐あってか、新作メニューの売り出し開始当日から好評な売れ行きで、人気メニューは午前中に完売するほどだった。

「お待ち同様です。海藻寒天レモン風味です」

 玉穂は祖母と孫の家族二人で来店した御客に海藻寒天の中へレモンエキスやかんきつ類の皮を加えた進化系の寒天デザートを提供した。

「ふ~~ん、これ。うちの地元にあるえごみたいね」

 年老いた女性がおいしそうに言った。

「レモンが無かったら食べにくいかも」

 小学生ほどの男の子は、試作中。食べた時に思った玉穂と同じ意見を言った。

 実際に、玉穂も果物などと一緒に食べないと手が進まないと感じた。

「私はレモンが無ければ、懐かしい味がするとけれど、レモンを入れるのは新しいわね」


 お持ち帰り菓子も含め、店内外で夏限定メニューは人気だった。


 数日後。

 玉穂はお昼休みに伊久実とこむぎの三人で、夏休み中に行われる銀月神宮を中心に行われる夏祭りについて話合っていた。

「去年は毎日大雨でまともに人が来なかったらから、今年は流石に晴れてほしいよね」

 伊久実はひじを机につけ、手で顔を支えた。

「そうね~~」

 玉穂は腕を組み上を向いている。

「雨が降ることを想定して食べやすいメニューを目指すのはどう?」

 こむぎが提案した。

「それいいね! あっ、でも、商品によって両手ふさがっちゃうよ」

 一度は賛成した伊久実だが、現実問題、強みの商品と食べやすさがマッチするか疑問に思った。

「そこを逆手に取るんだよ!」

 こむぎはアバウトに考えたのか、弱みを強みに変えようと言う。

「そうは言ってもね~~」

 玉穂も伊久実と同様に、現実的なジャンルによる食べ方の問題が頭を浮かんだ。

「う~~ん」三人は悩みに悩む。

「あの~~、三人で話すのはいいけれど、内容があまりにも小学生らしくないから、もうちょっと楽しい話をしてもらえる?」

 三人が所属する担任から経営者の悩ましい話ばかりが日常的に耳に入ってくることを教員の立場から、もう少し小学生らしいどうでもいい話をしてもいいのではと間接的に言われた。

「先生、私たちは青春を捨て、代々継承してきたお店を守ろうと必死なんだ」

 伊久実は自分の人生を悟ったかのような顔をした。

「先生、私たちのことは諦めてください。どんなに学業が忙しくても、自分達のもう一つの仕事に手を抜くわけにはいかないんですから」

 玉穂は何一つ表情を変えず淡々と自分たちの宿命の一部について話した。

「先生もお腹すいたら、遊びに来てくださいね!」

 こむぎは担任に直接的に自分たちの商品への購買運動に協力しろとばかりに宣伝してきた。


「いや~~、公には言ってはいないけど」

 小さな拳を作る。

「君たちが働いていない間に私。皆のお店へ食べに行くからね。じゃなくて……、まあ、ご家族からその年でお店を任されているのは偉いことだけど、ちゃんと小学生らしく遊んでね。大人になれば本当に遊べないから」

 学業とお商売と両立している三人にいつでも仕事はできるが、児童や学生の時にある青春には限りがあると言った。

「先生、ちょっと茶化しちゃったかも……。ごめんなさい」

 こむぎが特別な立場を逆手に多少鹹かったことを謝罪した。

「まあ、私達は私たちなりに青春を謳歌しているつもりですから」

 玉穂は自分たちの現実を理解している。

「私たちもずっと働き漬けって訳ではないので、ご安心を」

 伊久実は担任に心配を掛けまいと一言言った。


「みんな、無理しないで頑張ってね」

「はい」


 夏祭りを数週間前に迫った銀月神宮。

 外宮敷地内にある会議室にて、宮司、管理人、商工会議所、稲荷餅の飲食店団体による夏祭りに関する会議が行われていた。

「こ、これは……」

「もはや、この地域全体の飲食店を買収しようというような……」

「このままでは……、稲荷餅が無くなってしまう……」

「しかし、一体どうすればいいのですか?」

「私たちには若い力が必要だ!」

「ああ、彼女たちに頼もう!」

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