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序章
六百年以上前から城と寺。
そして、神社が共存し、栄えてきた町。稲荷餅。
稲荷餅という町は、地理的にも芸術的にも非常に美しい土地である。
それは、町が碁盤の目のように建物が連なっている。
この町は、東西の真ん中に南から北へ向かう大きな道。
稲荷大路が通っており、町の最北には、この町だけではなく、この国の王であった。人物が暮らしていた御所がある。
現在は、銀月神宮として、王を祀っている。
南北を真ん中に、西から東にかけて、稲荷餅のもう一つの大路がある。
それが、赤石大路。
銀月大路と赤石大路を合わせると、方角で地区を四つに分けた。
その内の一つ。
北東地区に、この物語の主人公。
白月 玉穂が店主(仮)を務める甘味処・玉月がある。
店の店長(仮)である玉穂。
彼女の経営の一日であった。