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パート決め

モニカは瑞希の部屋でくつろいでた。

「あ!!それ私が買ったグミ!全部食べるとかありえないんだけど!」

「そんなに文句言うなら名前書けば。」

「あんたなら名前書いても食べそうなのよ。」

「これってグミって言うんだ。人間の食うものもなかなか美味しいわね。今度私のも買ってきて。」

「話を聞け!このクソ死神!」

「本当にセレブの使う言葉かしら?品がないわね。」

「それより今日の部活体験つまらなすぎた。あんたがやれって言うから参加したけど。」

「あんたにはやってもらわないといけないのよ。あんたの被害者はこれよりもっと辛い経験してるのよ。自業自得よ。」

「はいはい。やれば良いんでしょ。」

瑞希はモニカにイラつきながらベッドに横たわる。

「息子の受験だったのに、こんなよく分からない世界でよく分からないことにつきあわされる私は不幸よ。」

「グミ買って来て!」

「自分のお金で買えば良いでしょ。」

「死神の世界にはそんなもの無いの。」

瑞希は夕ご飯を食べて携帯をいじりながら寝た。

「加藤さん、部活体験どうだった?吹奏楽部入るんでしょ?すごいな。」

前の席の刈谷芽衣子は聞いた。

「親に言われてしょうがなく入る部活だからマジでつまらないわ。」

「でも楽器とか私出来ないから挑戦するのすごいな。」

「あんたは何してたの?」

「私は漫画研究会に行ったけど、優しい先輩ばかりだし、漫画の話が止まらなくて楽しかった。」

「オタクとか何が楽しんだろ。」

「ごめん、私の話して。」

芽衣子は瑞希と話しにくい雰囲気になった。

「加藤さん、ミニコンサート行こう!」

「あんた誰?」

「私も同じ吹奏楽部に入る望月彩乃よ。ここでユーフォニアムをやろうと思うの。」

「ユーフォー?」

「ユーフォニアム!!」

「ユーフォー?あのユーフォー?ウケる。」

「次言ったらマジで怒るよ!」

ユーフォニアムとはチューバより小さいチューバに似た楽器で、チューバと同じ動きをすることもあれば中低音域として対旋律を吹くことの多いパートだ。対旋律は裏メロディーとも言われている。

「それなら写真見せて。」

「こんな楽器よ。」

「チューバと似てるね。」

「チューバより小さい楽器なのよ。」

彩乃と一緒にミニコンサートに行った。

「あ、加藤さん、今日も来たんだ。覚えてる?」

「誰?」

「昨日隣にいた林崎真希よ。」

「吹奏楽オタクか。」

「この子両親が吹奏楽熱心で羨ましいよ。」

「そうなの?良いな。」

「ミニコンサートはじまります!」

新入生は全員会議室に入った。

「皆さん、こんにちは。」

「こんにちは。」

「今日もMWOミニコンサートにお越しくださいましてありがとうございます。最初にお送りします曲はA列車で行こうです。」

また会議室に音が響く。ソプラノサックスのソロが響き渡る。

「ソロ吹いてるのって誰?」

「3年生のサックスパート、中町麻央先輩よ。」

入部してすぐに部内情報に詳しい新入生がいる。

「瑞希、今日も来たぞ。」

「高木、あんたこと呼んでないけど。」

今日も賢人は部活体験に来た。

「高木って絶対仲良くなれなそう。」

「そうだよな。」

内気な新入生、毛利太郎と木曽川諒太は賢人を見ながら言った。

「パートどうするんだ?」

「パーカッションにしたいけど、今年かなり人気なパートなんだ。」

「そうだな。僕もパーカッションが良いけど選ばれるか。そう言えば、高木もパーカッション希望らしいぞ。同じパートなら仲良く出来る自信ないわ。」

「続いての曲はブラジルです。」

陽気なダンスと共に演奏が行われる。

「きゃー、榎本先輩のソロよ。」

「カッコいい。」

女子の新入生は榎本成輝に惚れていた。

「まあ顔は悪くないわね。」

瑞希が言った。

「確かに顔は悪くないけど、私はお子ちゃまはタイプじゃないわ。」

モニカが言った。

「サックスパート希望の皆さん、こちらに集まってください。」

「トロンボーンパート希望の皆さん、こちらに集まってください。」

「初心者の皆さんはこちらです。」

ミニコンサートが終わり、部活体験がこの日も始まった。

部長の夏川京子と副部長の森本萌が二人を案内した。

「今日は金管楽器の部屋に案内します。まずはトランペットの楽器体験です。」

二人はトランペットの部屋に入る。

「はじめまして、トランペット3年パートリーダー、本柳穂乃香です。」

「トランペット2年パートリーダー、荒川香澄です。」

「パートリーダーってソロめちゃくちゃ吹いてる榎本成輝がやるもんじゃないのか?」

瑞希が二人に聞いた。

「あんたね、敬語が使えないわけ?初心者とは言え、中学校で何を学んできたのかしら?」

荒川香澄は怒り出した。

「それと榎本先輩って呼ばないと。」

「じゃあ、榎本さん。」

「榎本先輩よ。」

「香澄ちゃん、今日は楽器体験だから部活のマナーは後日教えることにするわ。今日は楽器体験の方が最優先よ。」

「先輩、分かりました。」

3年生はすぐに部員に辞めて欲しくないため最初は優しめに指導することになった。

「これがマウスピースよ。トランペットは唇を振動させて音を鳴らすの。金管楽器全部に共通することね。」

二人は中々音を出せずにいた。

「何これ、全然音出ない。」

「トランペットには向き不向きがあるの。もしかしたら他の金管楽器とかなら上手く音が出るかもしれない。」

「音が出ないな。」

「高木も音でないのね。」

2人ともトランペットのマウスピースでも音が鳴らなかった。

「次はホルンの部屋よ。」

「ホルンパート3年パートリーダー中里光輝です。」

「ホルンとトランペットってどう違うんだ?」

賢人がタメ口で聞く。光輝は苦笑いをした。

「トランペットはメロディーなどの主旋律を吹くのに対して、僕達は対旋律や裏打ちを吹くことが多い。それとグリッサンドはホルンの誇りだ。」

「ホルンはギネスブックにも載る難しい楽器よ。」

「さっきトランペットの教室でも聞いたと思うが、これがマウスピースだ。ホルンも唇を振動させて鳴らす楽器なんだ。まずはマウスピースから音を鳴らすぞ。」

「何これ、全然音が鳴らない。」

「金管楽器は頬を膨らませちゃまともに吹けない。口の形はこんな感じだ。」

光輝は口を見せた。

「吹いてる時の口の形をアンブシュアって言うんだ。」

「あんぶしぁ?」

「アンブシュアだ。」

「やっぱり吹けない。」

「俺と吹けない。」

「向き不向きがありそうだからそう落ち込むことはない。」

ホルンの部屋を二人は出た。

「ホルンの部屋、何かピリピリしてなかった?」

「さあな。ヒステリックなやつは俺は相手にしないけどな。」

「次はトロンボーンの部屋よ。今年はトロンボーン、かなり人気なパートだけどとりあえず楽器体験だけは出来るわ。今年は7人もトロンボーン希望だし。」

2人はトロンボーンの部屋に行った。

「トロンボーン3年パートリーダー橋本希です。」

「のぞみん、この二人、楽器体験でもさせてあげて。」

「トロンボーン楽器体験させても経験者の希望多いし。」

「良いから。2人の適性を見るのよ。」

「分かったよ。」

トロンボーンパートの3年生は渋々と2人に楽器体験をさせる。

「まずこれがマウスピースよ。」

「トランペットとホルンと大きさが違う。」

「2つの楽器と比べると音域が少し低くなるからマウスピースが大きいのよ。まずはマウスピースで音出して見て。」

「お、音が出た。」

「俺もだ。」

「それならマウスピースを本体につけて吹くよ。持ち方は肩に乗せて、右手でスライドさせるの。まずはこの位置で音を出して見よう。」

二人は同時に音を鳴らした。

「すごいじゃん。初めてなのにこんなに音出るなんてすごい!」

「すごいじゃん!」

トロンボーンパートの2年生、3年生は二人を褒めちぎった。

「次はユーフォニアムのパート部屋に行くよ。」

「ユーフォー?」

「ユーフォニアムよ。」

「そう言えば、今日同じクラスのやつでユーフォと言うやつ吹いてるやついたな。」

「あれ、加藤じゃん。」

「お前、名前なんだっけ?」

「私は同じクラスの望月彩乃よ。」

「ユーフォニアムパートもう一人欲しいのよ。」

今年のユーフォニアムパートの第一希望者は望月彩乃だけ。最高3人までユーフォニアムパートに入れる。

「ユーフォニアムパート、3年パートリーダー、香坂萌花です。千代子ちゃん、この二人教えてあげて。」

「香坂先輩、分かりました。」

安藤千代子はユーフォニアムパート2年パートリーダーだ。

「まずはこれがユーフォニアムのマウスピースよ。」

「トロンボーンと大きさ一緒なんだな。」

「そっくりね。」

「さっきトロンボーン音出せたみたいね。マウスピースで音を出してみて。」

二人は音を出した。

「すごい、上手じゃん。今度は本体につけて音を出すよ。」

すると二人は音を出せた。

「すごい!ちゃんと音出てるじゃん。」

ユーフォニアムパートの教室でも同じような褒めちぎりが行われた。

「高木、何かお世辞ぽく聞こえない?」

「確かにそうだな。」

「お世辞なんかじゃないのよ。本当にすごいと思ったんだから。」

千代子は目が笑っていなかった。

「次はチューバパートの教室に行くよ。」

「チューバパートって部長のいるところか。」

「そうよ。」

彼らはチューバの楽器体験の部屋に入る。

「チューバはベースラインの役割をするパートでバンドの支えになるパートです。」

「まずはマウスピースで音を出してみて。」

二人は音を鳴らすことが出来た。

「次は本体につけて吹くよ。」

賢人だけ音がよく響いた。瑞希は鳴らしにくそうな感じだった。

「何これ、あんまり音ならない。」

「俺は音でたけどな。」

「君、低音楽器向いてそうね。」

次の日も楽器体験だった。

「今日はパーカッションとファゴットとストリングベースを体験して貰います。」 

瑞希と賢人は楽器体験をした。賢人は第一希望はパーカッションのままだった。

「お前は何かやりたい楽器あるのか?」

「やりたい楽器なんて無いわ。」

数日後、それぞれのパートが決まった。

「高木君はファゴットよ。」

「このお菓子みたいな楽器かよ。」

「加藤さんはテナーサックスよ。」

瑞希と賢人パートは決まった。

「やったー、私ホルンのままだ。」

林崎真希は無事ホルンパートに決まった。

「やったー、パーカッションだ。」

毛利太郎は希望通り、パーカッションに決まった。

「良かった。」

望月彩乃も希望通りユーフォニアムに決まった。

「何で私がストリングベースなの!悔しい!私クラリネット結構吹けるのに。」

中には希望してたパートに決まらない1年生もいた。クラリネット希望の篠原美代子はストリングベースパートになった。ストリングベースは別名コントラバスで吹奏楽で唯一使われる弦楽器だ。もう一人のストリングベースはトロンボーンから流れて来た石橋哲也だ。

「フルートか…」

木曽川諒太はパーカッションは担当出来ずフルートパートになった。他に女子が4人いる。諒太以外は女子のパートだ。

「今日からサックスパートよ。宜しくね。」

加藤瑞希を苦しめる地獄の日々が始まろうとしていた。

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